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13日の金曜日 ロンドン塔 閉館の儀


先週の13日の金曜日、イギリスの歴史を象徴する建物の一つであるロンドン塔の「閉館の儀式(Ceremony of the Keys)」というものを見学させて頂きました。一般観光客の閉門後に、21時53分から毎日必ず行われている儀式で、なんと700年前から毎日欠かさず行われている由緒ある儀式なのだそうです。

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ロンドン塔に向かう途中、タワーブリッジの前で一緒に行った皆さんと。このあたりのテムズ川の夜景は、私がロンドンの景色の中でもっとも好きな景色のひとつです。

「ロンドン塔」と「タワーブリッジ」と「ロンドン橋」は、名前が似ている為ややこしくてよく混同されるのですが、別のものです。ちなみに見た目がゴージャスな順に「タワーブリッジ」「ロンドン塔」「ロンドン橋」。「ロンドン橋おちた~」の歌で有名なロンドン橋は、なんてことない普通の橋です(笑) ちなみに上の写真の橋は「タワーブリッジ」の方です。

タワーブリッジを歩いて渡って夜のロンドン塔へ。
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11世紀に建設され、現在に至るまで、英国王室の宮殿として使われている他、古くから、身分の高い政治犯などの監獄・処刑の場としても使用されてきました。気のせいか、やはり建物全体からも、未だにどよーーんとした不穏な空気が漂っているような気がします。

ロンドン塔の最後の幽閉者はナチスのルドルフ・ヘス。その他にも、ここで処刑されたのは歴史に名を残す著名な人々も多く、ヘンリー6世、エドワード5世、ヘンリー8世の2番目の王妃であるアン・ブーリン、5番目の王妃であるキャサリン・ハワードなどなど・・。ちなみにヘンリー8世は、自分の片腕であった宰相のトマス・クロムウェルもここで処刑しているそうで、一体どこまで身内を処刑すれば気が済むのだか・・。

ちなみに、前にイギリス人の知り合い何人かとイギリスでの歴史の授業について話していたところ、その場にいた皆が口を揃えて、イギリスの小学校の頃の歴史の授業で唯一覚えていることは「ヘンリー8世は6人の妻がいて、自分の奥さんまでを処刑した横暴な王様だった!」ということのみだと言っていました(笑)。 イギリスの宗教をも含め、大きく歴史が動いたこの辺りのエピソードは、イギリスの子供たちにとっては一番ドラマチックで興味深いところらしいです。




さて話が逸れてしまいましたが、ロンドン塔には、ヨーマンウォーダー(通称ビーフィーター)という衛兵たちがいます。下の写真は、ビーフィーターの名前と絵が採用されたジンのラベル。
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ビーフィーターという名前は「Beef Eater」 (肉食人)から来ているそうです。昔、ビーフィーターへの給料には、お金だけでなく牛肉も含まれていたらしく、当時はまだ一般庶民の食べ物ではなかった為、それを妬んで揶揄する人々が「牛食い」と呼んだのが起源だとか。

現在、ロンドン塔のビーフィーターの数は40人前後。英国王室直属の軍人だそうで、兵役22年以上の経験と、善行章を受けていなければなることができないという、いわばエリートであり名誉職。歴史的には、監獄の囚人の監視や国王の守衛が主な仕事でしたが、現在の主な仕事はロンドン塔の観光客の観光ガイドだそうです。

ということで、観光ガイドとしてもプロ中のプロのビーフィーター。
「国王衛士」という硬いイメージからは想像も付かないような、ユーモアたっぷりの解説入りで、ロンドン塔内の敷地を一通り案内して頂きました。
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夜のロンドン塔の敷地内。やはりどことなく薄気味悪さが漂っています。

その後いよいよ、今日のメインイベント、『閉門の儀式(Ceremony of the Keys)』。
儀式の行われる「反逆者の門」の辺りに集合です。儀式中は写真撮影禁止だったので、ここからは残念ながら写真無しなのですが・・・。

21時53分ぴったりから儀式開始。
鍵を持ったビーフィーターの長が「反逆者の門」まで歩いてきて、「血の塔」の影で衛兵たちと出会います。(塔や門のネーミングがいちいちおどろおどろしい・・・)

衛兵はいきなり銃を構え、以下の押し問答が行われます。
ひんやりとして静まり返ったロンドン塔内でのこの突然のやりとりはかなりの緊張感。

番兵: Halt! Who comes there? (止まれ!そこにいるのは誰だ?!)
ビーフィーターの長: The keys.  (鍵だ!)
番兵: Whose keys?   (誰の鍵だ!)
長: Queen Elizabeth's keys.  (エリザベス女王の鍵だ!)
番兵: Pass Queen Elizabeth's Keys. All's well.    (エリザベス女王の鍵を渡せ。それでよし)

そして一行はアーチをくぐりぬけ、ホワイトタワーの前の階段を上り、階段の一番上にたどり着くと、ビーフィーターの長は帽子を掲げながら

「God preserve Queen Elizabeth. (エリザベス女王に神のご加護あれ!)」 

と叫び、つづいて一同が「アーメン!」と叫びます。
これと同時に、時計が22時の鐘を鳴らし、衛兵鼓手がラッパを吹き鳴らします。

(儀式の様子は以下のページに動画で見ることができるので、興味のある方は見てみて下さい。http://www.trooping-the-colour.co.uk/keys/ )

ほんの10分足らずの儀式でしたが、そこだけ空間がタイムスリップして中世にいったかのような、不思議な体験でした。

儀式の最後にロンドン塔に響き渡るトランペットの音を聴きながら、今自分が目にしたものと同じ光景が、全く同じ場所で同じセリフで700年間毎晩繰り返され、きっとこれから先も何百年も続いていくのだろうと思うと、普段滅多に頭の中に登場しない「悠久」の二文字が、頭の中に浮かんできました。


ところで、この儀式に関して驚いたことその1。

この儀式は700年間欠かさず毎晩同じ時間に続けられていると書きましたが、一度だけ、時間通りに行われなかった日があるそうです。それは、第二次世界大戦中、ロンドン塔が爆撃された日。

なんとこの日でさえ、爆撃の直後、衛兵たちはすぐに立ち上がり、多少の時間の遅れはあっても、この儀式を遂行したとのことです。この時の遅れを詫びる、上官から国王への手紙が、今でも塔に保管されているらしいです。爆撃にもめげずにちゃんと儀式を行った上に、自分に非はないのに詫び状だなんて、なんと健気な・・・・。ちなみに「儀式の遅れは敵の行動によるものであり、上官に非はない」との国王の返事も一緒に保管されているとのことです。

そこまでして儀式や形式を重んじるイギリス。どこか日本にも共通するところがある気がします。


驚いたことその2。

ロンドン塔の敷地の中には、ビーフィーターとその家族の約100人ほどが実際に住んで生活しているそうです!ここに住んでいるビーフィーターの奥さんとお話したところ、「小さなコミュニティになっていて、ここでの生活はとても楽しいわよー」とのこと。この奥さんは、ロンドン内の普通の会社で働いているため、このロンドン塔の中から毎日出勤しているのだそうです。

しかしかつては処刑が日常で行われていた場とあって、心霊話も絶えないこのロンドン塔内に住むのって怖くは無いんだろうか・・。ちなみにこのビーフィーターさんは、「前に来たお客さんは、青い服を着た小さい子の亡霊を見たって言ってたよ~」と陽気に言っていました。

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上の写真はロンドン塔内のパブにて。儀式を待つ間少し時間があったのでここで皆で休んでいました。壁には、ビーフィーターにまつわる絵や、これまでにビーフィーター達に与えられた数々の勲章が飾られています。

このパブはロンドン塔内にすんでいるビーフィーター達やその家族にとっても憩いの場所だそうです。この小さな小さなコミュニティ内に唯一生活の為に建てられているのが、スーパーや商店などではなく「パブ」だ、というところが、やはりイギリスらしいなぁ・・と思います。

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ということでロンドン内屈指の心霊スポット(?)に、よりによって13日の金曜日に行ってきてしまったわけですが、上の写真のバックには何もうつっていないことを祈ります(笑)

今回のツアーは夫の同僚のお母さんの同僚の旦那さんがビーフィーターだったという、とーっても遠いつながりで偶然にも誘って頂いたのですが、「The Ceremony of the Keys」は事前に申し込めば、誰でも無料で参加可能だそうです。人気があるため、少なくとも2ヶ月前くらいに申し込んでおいた方が良いとのことです。

ロンドン塔・閉館の儀式「The Ceremony of the Keys」への申し込み方法などはこちら
http://www.hrp.org.uk/TowerOfLondon/WhatsOn/ceremonyofthekeys.aspx
by sayaka-blmusic | 2009-02-19 23:00 | ロンドンでの日常生活
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