最近の練習は、5月7日(水)にロンドンで行うラフマニノフリサイタルに向けて、ラフマニノフのプレリュード集を中心に練習しているのですが、それと同時に最近力を入れているのが、ラフマニノフのオーケストラ曲の、ピアノソロバージョンへの編曲作業です。
現在アレンジしている曲は、先日のブログ「号泣コンサート」にも書いた、ラフマニノフの交響曲第2番の第3楽章。 第2番というと、「あー、のだめカンタービレで千秋が弾いてのだめが影響受けて猛練習していたあの曲ねー」と思う方がいらっしゃるかもしれませんが、あれはピアノ協奏曲の第2番で、今回アレンジしているのは協奏曲ではなく、オーケストラのみで演奏される「交響曲」の方の第2番です。 この曲は、大好きで大好きで、聴く度に涙を流してしまう曲なのですが、 コンクールやコンサート等で頻繁に演奏されるピアノ協奏曲2番と比較すると、 ラフマニノフの交響曲の方は演奏されることが少ないので、よほどクラシックやラフマニノフが好きな人でない限り、あまり知られていない隠れた名曲です。 音大生でも「ラフマニノフの交響曲は聴いたことない」っていう人は意外に多いし。 うーーーん、こんなに名曲なのに、もったいない・・・・。 自分自身のコンサートでも演奏して、一人でも多くの人にこの曲のことを知ってもらいたい!と思い、ピアノソロバージョンの楽譜を探してみたところ、 何人かのアレンジャーによって編曲されている異なるバージョンが幾つか出版されているものの、どれも簡略化されすぎていて、大好きなフレーズも半分以上カットされてしまっている。 この曲の魅力を最大限に引き出せるピアノソロバージョン、 無いなら自分で納得のいくものを、自分自身で1から編曲してみよう、と思い、 ロイヤルアカデミーの図書館からオーケストラのスコアを手に入れて、1月末位からこの曲のピアノバージョンへのアレンジを始めました。 ラフマニノフのピアノ協奏曲の方については、これまでに幾つか自分自身でソロバージョンやトリオバージョンに編曲をしていて(ピアノ協奏曲第2番ピアノソロバージョン・トリオバージョン・フルート&ピアノバージョン・チェロ&ピアノバージョン、パガニーニの主題による変奏曲18変奏ピアノソロバージョン、 などなど)、 コンサートでも演奏しているのですが、フルオーケストラの為の曲である交響曲のピアノバージョンへの編曲は私にとって初挑戦。 オーケストラ曲をピアノ用にアレンジ、ということは、 100人近くで演奏し10以上のパートから成る曲を、 1台のピアノで、たった2本の手で演奏できるようにアレンジしなくてはいけません。 冒頭のテーマ部分のスコアの一部。ラフマニノフの曲の中でもベスト3に入る珠玉の名メロディだと思います。このメロディを見て、「ああ、この曲のことね!聴いたことある!」と思う方もいらっしゃるかもしれません。 オーケストラのスコアのコピーを並べ、いくつかのオケによる演奏を聴き比べながら、 重要なパートに印をつける作業からスタート。ソロバージョンに含める候補のパートを全てピックアップした後、五線譜に書き写しながら、2本の手で演奏可能な範囲で音数を調整していきます。同時に極力和声的な禁止事項などに抵触しないよう各パートの動きや和音の転回を微調整。 うーー、ここはクラリネットのパートは入れたいのに バイオリンパートと一緒に弾くと指が足りない・・・。 うーーーーでもフルートのパートも入れたい。 ああああファゴットパートも捨てがたい・・。 断腸の思いで、いくつかのパートを諦めながら、 可能な限り原曲に忠実にピアノで再現できるよう、音を並べていく。 ちなみにラフマニノフはこの素晴らしい第3楽章を、たった2日で作曲したそうです(参考:伝記「ラフマニノフ」音楽之友社))。それをピアノバージョンにするのに数週間もかかってしまった私・・・。うーーむ、天才のメッセージを凡人が理解するには時間がかかります・・・・。 それにしても、この曲にはやっぱり底知れない魅力があるなぁ・・・と、 今回編曲をしていて改めて思わされました。 ロンドン地下鉄の喧騒の中、自宅の狭いフラットの机の前、 繁華街Oxford Circus駅前のマクドナルドのテーブル、などなど おおよそラフマニノフの雰囲気とはかけ離れた状況の中で編曲作業をしていても、 iPodでこの曲のオーケストラの演奏を聴きながら、スコアを眺めていると、頭の中に信じられないくらい広大な世界がぶわーーーーっと広がって、ついついまた涙が出そうになる。 マクドナルドのテーブルで、一人五線紙を前に鉛筆を握り締めて涙を流している姿はハタから見るとかなり怪しい人ではあるのだけど・・・。 ラフマニノフの音楽って、聴いていると ある国の一定の景色が写実的なイメージとして思い浮かぶというよりも、自分の中での内的世界の景色が広がっていく感覚がします。 普段の生活の中ではなかなか足を踏み入れることのない、心の中に広がる「無意識」という名の無限の海に、一瞬のうちに連れて行ってくれる、そんな感覚です。 そんなこんなで、ここ1ヶ月ほど進めていた交響曲第2番第3楽章のピアノソロアレンジ、 やっと先日、仮完成しました! 完成したのはいいのですが、 欲張って色々な楽器のパートを詰め込みすぎて、かなり技術的に演奏困難な曲になってしまい、現在、自分自身の書いた楽譜と格闘しながら練習中・・・。 完成バージョンは、2008年5月7日(水)にロンドン・ピカデリーサーカスのSt.Jame's Churchで行う松本さやかラフマニノフリサイタル第3弾 「Preludes + (プレリューズ・プラス)」(仮タイトル)にて、初公開予定です。 日本ではちょうど昨日、妹松本あすかの六本木STBでのライブが無事終わったとの報告をもらいました。お疲れ様あっちゃん!そしてこのブログをお読みの方で、会場まで足を運んで下さった皆様、本当にありがとうございました。 -------------------------------- ■追記■ ラフマニノフ交響曲第2番第3楽章の動画、YouTubeで見つけました。 - YouTube動画 ラフマニノフ交響曲第2番第3楽章(アンドレプレヴィン指揮 N響) - YouTube動画 ラフマニノフ交響曲第2番第3楽章後半より (プレトニョフ指揮 ロシア国立交響楽団) この曲のCDも世界中のオーケストラから沢山出ています。 3楽章だけでなく他の楽章も超名曲なので、視聴だけでも是非聴いてみて下さい。 (記事トップのCDジャケットは、私のお気に入り版の一つ、ヤンソンス指揮サンクトペテルブルグオケの版のものです) - amazon.co.jpでのこの曲のラインナップ - amazon.co.ukでのこの曲のラインナップ
by sayaka-blmusic
| 2008-03-15 10:46
| ラフマニノフについて
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