号泣コンサート



クラシックのコンサートはつまらない。

理解できない。

眠い。

辛い。

2時間必死に、狭い椅子と眠気と戦い、
なんとか持ちこたえて(やっと終わったーー)と思いながら拍手をすると、
更に何曲もアンコール曲なんかが待っていたりして、
ホールを出る頃にはもうフラフラ。

なぜこんな辛い経験をするために、お金と時間を投資しなくちゃいけないのか分からない。
こんなことならジャズやポップスのコンサートの方が、よっぽど気軽に楽しめる。



・・・・・と、正直思っていらっしゃる方、
このブログをお読みの方の中にもいらっしゃるかもしれません。

クラシックに関わっている私にとっても、たまにそう思うことはあるし(思われていることもあるかもしれないし・・)、私なんかの何倍も数のクラシックコンサートに足を運んでいらっしゃるクラシックマニアの方々にとってでさえ、つまんない演奏会はやっぱりつまらないと思うんですです。

弾いている人が有名かどうかとか、知っている曲知らない曲に関わらず。

クラシックの演奏会ほど、本当の意味での「当たり率」が少ないエンターテイメントも少ないかもしれません。映画に行っても、ポップスやジャズのライブに行っても、大抵の場合は値段に見合う位は楽しめるし。もちろん人それぞれの好みや趣味にも寄るけれども。




でも、1年に数回、
こういう風に、全身が震えるような感動を与えてくれるコンサートに出会ってしまうから、
やっぱりクラシックは凄い、と思うし
この感動はクラシックならではの醍醐味だと思わざるを得ない。



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今回聴きに行ったのは、
ロンドン・ロイヤルフェスティバルホールでの、ロンドンフィルハーモニー管弦楽団(LPO)のコンサート。 指揮はブラジル人のロベルト・ミンスク (Roberto Minczuk)という指揮者で、名前を聞くのは初めて。

曲目は、私が最もな好きなオーケストラ曲の一つ、ラフマニノフの交響曲第2番。

ちなみに、ラフマニノフの曲って、
ピアノ協奏曲は、割と聴くことができる機会が多いのですが、
オーケストラのみで演奏される交響曲の方は、何故かあまり演奏される機会がありません。

ただ、この半年ほどは、ラッキーなことにラフマニノフの交響曲もロンドンで割と聞ける機会が多く、

●2007年8月 ラフマニノフ・交響的舞曲(シンフォニックダンス) David Atherton指揮 BBCウェールズ交響楽団 
●2007年10月 ラフマニノフ・交響的舞曲(シンフォニックダンス) Vladimir Jurowski指揮 ロンドンフィルハーモニー管弦楽団 (75周年特別公演)
●2007年12月 ラフマニノフ・交響曲第3番  Osmo Vänskä 指揮 ロンドンフィルハーモニー管弦楽団 

と、何度か聴くことができました 。ちなみに昨年10月に、ロイヤルフェスティバルホールで聞いたVladimir Jurowski指揮のシンフォニックダンスは、鳥肌がたつほど素晴らしい演奏で、終わった後、興奮のあまりホールの外のテムズ河沿いを、「生きてて良かったーーー!」とまるで酔っ払いのようにパタパタ駆け回ってしまった程。


そして2008年1月19日。今回はいよいよ私の大好きなラフマニノフ交響曲第2番。

この曲は、あまりに大好きで、異なるオーケストラ&指揮者によるCDを10枚位持っているのですが、その中でも好きなのは、

ラザレフ指揮 ボリショイ交響楽団
ヤンソンス指揮 サンクトペテルブルグ交響楽団

というように、どちらもやはりロシア or 旧ソ連出身の指揮者&ロシア人オケによるもの。

今回は、ロンドンフィルとブラジル人指揮者による、ラフマニノフにしては少し意外な組み合わせの演奏ということで、正直そんなに大きな期待はしていなかったんです。ロンドンフィルももちろん一流オケなのですが、どこかで(ラフマニノフならやっぱりロシア人指揮者&ロシアのオーケストラじゃなきゃ・・・)という偏見が私の中でありました。



そんな偏見が、1楽章の出だしからして見事に打ち砕かれました。

コントラバス10人以上による低音ユニゾン。
ピアノの演奏もそうだけど、
素晴らしい演奏の時って、一音目から緊張感が違う。

コンサート前半のコンチェルトでは、
つまらなそうにしていた横に座っていた6歳位の小さな女の子も
一気に身を乗り出して食い入るように聞いていました。
彼女は、まずこの曲は知らないはず。
本当に素晴らしい演奏の時って、
知ってる曲だからとか知らない曲だからとか、
全く関係なく、引き込まれていくから不思議です。


ラフマニノフ独特の、長い長いフレーズの歌い方や、
クライマックスに向けてのクレッシェンドの積み上げ方、
ロシア音楽特有の重みのあるリズム感、
幾十にも重なる、音の「あや」のバランス・・。 見事としか言いようがない。

でも、そんなテクニック的な凄さを微塵も感じないくらい本当に自然で、
聴いている間に、こむずかしい感想とかはどうでも良くなって
ただただ音楽に身を任せていると、気がついたらぽろぽろ涙が溢れてきてしまいました。

(一番好きな3楽章になったら泣くかも・・)とは思っていたのですが、
実際は1楽章なかばから泣きっぱなし。


楽章が進むにつれて、心や耳の敏感度がどんどん上がってきて、
全てのメロディが、それぞれの楽器でない「何か」に聞こえてきて、
バシバシ脳内に突き刺さってくる。


私が自分のお葬式でかけてもらいたい曲ナンバー1の第3楽章は、
私が頭の中で抱いている「理想の演奏」を遥かに上回る演奏で、
あの中間部の弦のかけあいの後のC-majorの和音に辿りついた瞬間は、
鼻水をすする音を我慢するのに大変・・という状態を通り越して
もはや嗚咽を我慢するのに必死でした。


そして最後の4楽章。
クライマックスへの期待と、
いつまでもこの演奏が終わってほしくない気持ちが入り混じった中、
最高潮の達したオーケストラの響きの爆発と共に、
夢のようなひとときが終わってしまいました・・・・。


演奏が終わった瞬間、オーケストラのメンバーからもガッツポーズが出ていたので、
多分彼ら自身にとっても、最近のコンサートの中で会心の出来だったのではないかな、と思います。






きっとラフマニノフの伝えたかった小さなメッセージの一つ一つまでが
観客の心の奥のすみずみまで届いてきた、そんな感じでした。
もちろんその裏には、確実な技術の裏付けがあってこそな訳だけれども。

「あえて面白いことをしよう」とするような
奇をてらった演奏では決してなく、
ラフマニノフの音楽そのものの良さを、
忠実に引き出そうとする演奏でした。


演奏会が終わった時には、マスカラが全部流れてパンダ状態。
一緒に聴きに行った友達が、お化けみたいになってる私の顔を見てぎょっとしていました。
泣く予定がなかったので、ウォータープルーフのマスカラをしてこなかった・・・・。


今まで聴きに行った演奏会で、大感動したコンサートや、
衝撃を受けたコンサートは他にも沢山あるけど、
音楽を聴いていて、こんなに涙を流したのは、ホント生まれて初めてだったかもしれない。

ラフマニノフのメッセージと、それを忠実に伝える演奏と、今の自分の求めているチャンネルと、何かがぴたっと一致したのかもしれません。作曲者と演奏者と聴いている側が、三位一体になれる瞬間を、久しぶりに体験しました。




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ラフマニノフは所詮ロシア人しか弾けないって、
もし自分が人から言われたら、一番腹が立って悔しい先入観を、
結局は自分も持っていたのだな・・・と思う。

知らないうちに、どこかでそのことにコンプレックスを持っていたのかもしれないし、
どこかでそれを言い訳にしようとしていたのかもしれない。

今回、ロンドンのオーケストラと、ブラジル人の指揮者によるラフマニノフの演奏で、
こんなにも心が震える体験をさせてもらって、

私もいつか、
アジア人として、私なりの演奏で、
ラフマニノフの魅力や感動を一人でも多くの人に伝えていくことができれば・・、
という大きな励みになりました。
by sayaka-blmusic | 2008-01-23 09:54 | ラフマニノフについて
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