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コンサートレポ準備編その2 「2台ピアノでの練習」

松本さやか・あすかロンドン公演 Rhapsodies 「2台ピアノによるふたりのふたつのラプソディ」 レポート第二弾です。 私とあすか、二人の視点から書いたレポートを順次アップさせて頂いています。

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(さやか編 written by さやか)

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   (二台ピアノでの練習風景。 ロンドン内のピアノ貸練習スタジオにて)


今回のコンサートは、2台ピアノによる、ピアノコンチェルト曲の協演。ピアノコンチェルトとは、通常ピアノとオーケストラで演奏するものなのですが、
殆どのコンチェルトで2台ピアノ演奏用の楽譜も出版されており、今回は2台ピアノを用いての演奏でした。


ロンドン内で、2台のピアノで同時に練習できる場所を探すのは至難の業。ロイヤルアカデミー内にはもちろんあるのですが、私はもう卒業してしまっている為、正規に部屋を予約することはできません。2台のピアノが置いてあるロンドン内の貸練習スタジオ(Bond Streetやスタンウェイショールームや、Edgeware roadにあるJaques&Samuels)、またアップライトと電子ピアノを両方お持ちの生徒さんのお宅などで、練習させて頂いていました。


ここで合わせるまでは、二人それぞれ東京とロンドンにて、自分のパートの練習。

あすかはガーシュインのピアノソロ部分と、ラフマニノフのオーケストラ伴奏部分、
私はガーシュインのオーケストラ伴奏部分と、ラフマニノフのピアノソロ部分というように、
お互い自分のソロパートと、相手の伴奏パートを練習している形です。

二人で一緒に合わせ練習ができるのは、コンサート当日リハーサルを含めて5日間のみ。
限られた時間で、お互いのテンポやブレス、間合い、音量バランスなど、すべてを整えて、一つの音楽に仕上げていかなくてはいけない。

二人で最後に2台ピアノの協演をしたのは、あすかがジャズを勉強し始める前が最後なので、かれこれもう約7,8年たっている。

あすかの演奏も、時々ネット経由で録音を送ってもらったりYou Tubeで見たりしているものの生で聴くのは本当に久しぶり。あすかにとっても、私の演奏を生で聴くのは丸2年ぶり。

お互い、相手がどんな音を出すのか、どんな音楽を奏でるのか全く分からないまま、
あすかのロンドン到着当日に、早速第一回目の合わせ練習。

不安と期待をそれぞれ半分ずつ抱えながら、
取り合えず両曲とも一回ずつ通してみようということに。


。。。。。。。。。。


合うようで、合わない。

いや、音のタイミングとかは殆ど問題なく合っているのだけど、一緒の音楽を作っていっている感じがしない。

お互い同じことを感じていて、
それぞれの曲を一回ずつ通して合わせてみた後、「このままではマズイ・・・。」という重たい空気が二人の間に流れる。



7年前から二人それぞれ違う道を歩んで来て以来、
バックグラウンドが分かれ、
今や奏法もリズムの取り方も全く違う二人。

ガーシュインとラフマニノフ。
全くタイプの違う二人の作曲家のラプソディを、
性格もバックブラウンドも全く違う私達2人が一緒に演奏するという今回の挑戦。

個性の違う私達だからこそできるアンサンブルの音があるはずなのに、なかなかそれが見つけられない。

コンサート本番まであと4日しかない。

困った・・・・。

うーーんどうすれば良いのだろうと二人で悩みこむ。


けれども連日、合わせ練習を重ねたり、
練習以外にも、まるで離れていた2年間を一気に埋めるかのように色々なことをお互い話したりしているうちに、
だんだんとお互いの呼吸や、やりたい音楽が分かってきた。



結局のところ、
合わなかったのは、弾き方ではなくやっぱり気持ちだったんじゃないかなと思う。

物心付いた時から一緒にピアノを習ってきて、
一緒にコンサートやコンクールに出たりしてくる中で、

2人とも、相手の音楽やピアノが大好きなのと同時に、
相手に対してのコンプレックスも小さいころからずっとお互い抱いてた。

「私はあすかのようには弾けない。」
「私はお姉ちゃんのようには弾けない。」

生まれつき全く違う性格で、
同じ先生に習っていた時でさえ、演奏の個性も弾き方も全く違って、

お互い
相手にはあって自分にはない部分が、
はがゆくて、

でもどうすれば良いのか分からなくて、

2人とも胸のどこかにしまい込んできた。


あまりにも久しぶりに、お互いのピアノを合わせてみて
そんな気持ちをお互い思い出してしまったのと同時に、
久しぶりに一緒に弾くことができる嬉しさと、混乱とが入り混じって
一番大切な何かを忘れてしまいそうになったのかもしれない。


でも。

再びこうやって一緒にピアノを練習したり、
お互い相手に気付いたことをアドバイスし合ったり、
色々な話を二人でしている間に、気付いた。


2人で一緒に音楽を奏でるということは、
お互い張り合うことでも、お互いの穴を埋める作業でももなく、

お互いのいい面を、自分が持っている最大限の力でサポートし合って、
1+1=2でない、無限大の新しい音楽を生み出すこと。


私達が目指したいのは、

競演でもなく、ただの共演でもない、  協演。


その時きっと、1人では決して描けなかった絵が、見えてくるはず。


あすかがリードするガーシュイン、
私がリードするラフマニノフ、

それぞれの曲が、
1本の筆でなく2本の筆によって、
少しずつ彩られていく。


お互いの音に反応して、お互いの新たなイマジネーションが生み出されてくる循環。

音と音で、話し合ったり、笑いあったりするこの感覚。

言葉ではない音楽のコミュニケーション。
アンサンブル。


うん、大丈夫。

この感覚があれば、当日もきっとうまくいく。




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(あすか編 written by あすか)
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   (リージェンツパークの池を眺める、あすかの飼いぐるみ「うどん」)

ロンドン入り初日。
とにかく、姉と早く音を合わせてみたかった。楽しみで仕方なかった。



「人と一緒に音楽を奏でる楽しさ」をたくさん体感し、ソロよりアンサンブルが好きになったのは、この1年くらいの話だ。7年ぶりの海外。7年ぶりの姉との共演。きっと今の私と今の姉なら、他の誰よりも音で会話し、同じハーモニーを感じることができる。間違いない!



しかし、その確信は、姉と初めての音合わせの後、不安色で濁ってきてしまった。



姉の音。私の記憶の中にあった姉の演奏は、この2年でこんなに変わったのか。
この2年間、ロンドンの地で一人あらゆる経験から真摯に学び、自分のものにしてきた彼女のその音楽に、正直圧倒された。



いや。もしかすると、変わったという意味では私も同じなのかもしれない。
私がクラシックから一度離れてジャズやポップス勉強や活動をし始めたのが18歳の時。再びクラシックの楽譜と向き合い、演奏し始めたのが2年前。
きちんと勉強しなおしたいという意思を持ったのは、もっとずっと最近かもしれない。



自分なりに追求して仕上げてきたはずの、「あすかフィルハーモニー交響楽団」の奏でるラフマニノフのオーケストラパート。どこかに「ガーシュインの匂い」を残したままのその音は、ラフマニノフの故郷であるロシアの重たく深い空気を表現し切るまでに至っていなかった。姉のラフマニノフの音と比べて、あまりにも軽過ぎる。うまくハモれない。


焦った。

焦るほど余計に、練習中どんどん自分の音が自信のないものになっていくのが分かった。

姉だけじゃなく、今のままではお客様にも喜んでもらえないかもしれない。そんな不安。

あと、なんだか、シンプルに悔しかった。









最近やっと。

日本で演奏活動を続ける中、やっと自分の立ち位置を自分で自覚出来るようになり、
「クラシカルクロスオーバー」という言葉の中に自分の居場所を作り出せた気がしていた。



しかし果たしてこのロンドンの地で、クラシックともジャズとも分類しがたい自分の自然な音楽を、
ロンドンのお客様に受け入れてもらえるのだろうか。
お姉ちゃんとうまくアンサンブルできるのだろうか。







そこから本番までの4,5日間。
お借りしている練習場所のピアノやスタジオ、姉の部屋の電子ピアノなどで、とにかく練習を積んだ。合わせだけでなく、個人練習も出来るだけ重ねた。
なかなかうまくいかない中、姉は今の私の音楽を否定することもけなすこともなかった。
ただただ、私の演奏法の引き出しを増やす、その意味で、ラフマニノフの音の出し方や、基本的な奏法、
そのほか、私の良さがより引き立つためにと、いろいろなことを教えてくれた。





人からのアドバイスを受ける時、どんなに良いことを言われていても、自分のプライドの部分がそれを受け入れられない時がある。
でも、そんなときこそ、自分がさらに成長出来るチャンスなのかもしれない。

自分の弱さや自分の現実を正面から目をそむけずに見つめなきゃいけない。




練習を重ねていく最中に姉が私にこう言った。




「こういうこと言われて悔しいとか、そんなこと言ってる場合じゃないから。
だからあっちゃんも、私に対して気づいたことがあったら何でも言って。
私も、もっとこうしたらいいとか、こうして欲しいとか、言うから。

一番は、当日お客さんに喜んでもらうために今自分たちに出来る精一杯をやることだから。
とにかく、本当にいいコンサートにしよう!」








目が覚めた。つべこべ言ってる場合じゃない。



「お客さんに喜んでいただけるコンサートにしたい。」

二人が、ただただ、その同じビジョンに向かって行く中、

少しずつ、二人の音が本当の意味でハモるようになっていくのが、自分達でも分かった。

ソロ曲のリストや、ガーシュインの音も変わってきた。

日に日に自分の音のパレットが増えていくのが分かった。

練習以外でもたくさん姉と、いろんな話をした。

姉と私はまったく性格も違う。でも、だからこそ、アンサンブル出来た時、嬉しい。

せっかく二人で弾くのだから。二人でしか出せない音を出したい。



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(番外編)

その頃、弟ゆうきは、
お姉ちゃんたち2人が練習で忙しいので、





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自然史博物館のサル(の模型)を一人で鑑賞中・・・・・・。
by sayaka-blmusic | 2007-05-19 20:28 | コンサート関連
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