通常国際コンクールなどでは、 毎日各自2~4時間ずつの練習時間が割り当てられます。 今回のサンマリノ国際ピアノコンクールで練習会場となったのは、 サンマリノ音楽学校の練習室。 上の写真は実際の練習室の写真。 このピアノもそうですが、KAWAIのグランドピアノ&アップライトピアノが多かった気がします。 このような練習室にて、一次予選までは一人約2時間半、 セミファイナル以降は一人4時間のピアノ練習時間が割り当てられます。 でも実際一人一日2時間半~4時間じゃ、とてもじゃないけど練習時間は足りない。 しかし、サンマリノ共和国には音楽学校はここ一つしかなく、 教室数もピアノの数も限られているので、 100人近い出場者全員の時間をこれ以上確保するのは大変。 そこで、今回のコンクールでは対応策として、 「希望者には規定の割り当てられた時間外に 電子ピアノでの追加練習を申し込むことができます」 とのこと。 ロンドン中心部ではピアノの置ける環境に住むことはかなり難しく、 私自身フラットにはRoland社のHP1という電子ピアノを置いていて、 電子ピアノでの練習にはむしろ愛着がある位なので、特に違和感を感じなかったのだけど、 電子ピアノでの練習には全く馴染みがない皆は 「ええ!電子ピアノ??!」と一瞬微妙な表情。 しかし少しでも鍵盤に触れて追加練習できるならと皆こぞって申し込む。 グランドピアノでの練習割り当て時間が終わり、 夜の残りの時間は電子ピアノの練習室へ向かう。 あれ、同じ時間に電子ピアノの練習枠は6人分あるのに、 部屋番号は一つしか書いていない。 あれ。。。。あれれれ。。。 もしや・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 がちゃ。 なんと6台の電子ピアノが同じ部屋に並べてあり、 全員がもくもくとヘッドフォンをつけて練習中!!! 狭い部屋でエネルギー有り余る若手ピアニスト達6人が一斉に、 電子ピアノが壊れるんじゃないかという勢いで ばばばばばばーーーーががががーーーどんどんどんぎゃーーーん! とやっているわけです。 これは明らかに異様な光景。 他のメンバーもこんな経験は初めてとのことで、 練習しながらも、ついお互い吹き出してしまう。 最初は皆、この異常な事態に面食らっていたものの、 最新型の電子ピアノはかなり性能もよくタッチもグランドピアノに近く、 音色を変えてみたり、自分の演奏を録音してみたりと、 だんだん電子ピアノでの練習にみんな夢中になってきた様子。 いや、ほんとに電子ピアノって色々工夫した練習ができるし、 ボロボロのアップライトピアノとかよりも、 はるかにいい練習ができるんです。 そんな中、ふと一人の出場者が、ヘッドフォンを抜き、 電子ピアノに内臓されているリズムマシーンを付けながら、 ジャズの即興演奏を始めた。 それに反応して、ウクライナのDinaraもヘッドフォンを抜き、 彼の即興に合わせて超絶技巧のソロを始める。 他の皆も次々とヘッドフォンを外し、 なんとジャズのジャムセッション大会! すごい!!!!っていうか何でみんなジャズも弾けるの???!!! ジャズがうんともすんとも弾けない私はカメラを片手に撮影係に専念・・・・。 いやー、でも夢のような瞬間でした。 これぞボーダレスミュージック!!!! クラシックの人はクラシックしか弾けない、って、 はるか昔の話なのかもしれない。 優勝したブラフマンもジャズも得意って言ってたし、 うちの妹あすかもジャズとクラシックの両刀遣いだし。 10分くらいジャズ大会が続いたあと、 「そろそろ練習しなきゃね 笑」と誰かが言い出し、 また黙々とそれぞれコンクールの曲の練習に戻る。 夜10時。2時間ほどの電子ピアノでの追加練習が終わって、 中国からの出場者のJieがしみじみと、 「普段のピアノの練習って、一人きりでするものだけど、 こうやってみんなで同じ部屋で練習すると、さみしくなくていいね^^」 と一言。 うん、そうだよね。 ピアノを弾くって、 ものすごく孤独な作業。 小さい頃から皆、 毎日毎日何時間も狭い部屋でただ一人ピアノと向き合って、 コツコツと音楽を作り上げていく。 これから競い合うことになるはずの立場の皆が、 同じ部屋でこうやって励ましながら練習しあって、 気分転換に皆でジャズのジャムセッションをやって・・・・。 本番直前、はちきれそうな緊張を抱えていているのは皆同じ。 でも、あの不可思議な共同練習室が、 そんな全員の心を、本当に癒してくれた気がする。 本番前日の夜なのに、 「あー幸せだなぁ、音楽やっててよかったなぁ・・」 と実感してしまいました。 一番上の写真はサンマリノ音楽学校の校舎。 アドリア海の近くの山頂に位置するサンマリノは、 毎日毎日これでもかと言うほどの澄み切った青空。 気温も25度以上あり、ノースリーブでもOKの真夏のような気候でした。
by sayaka-blmusic
| 2006-10-05 01:48
| サンマリノ国際コンクール
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