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イギリス出産体験記その3  Midwifeの自宅訪問検診


イギリス妊娠出産体験記その2
の続きです。

前回の日記で書いた通り、イギリスのNHSでは、出産後問題なければ、たった一泊での退院、経産婦だと出産6時間後の退院!と仰天の短さですが、その分退院後のケアは、驚くほど丁寧に見てくれます。

退院翌日、つまり出産2日後から、Midwife(助産婦)が、毎日自宅を訪問し、母体の回復度合いと、赤ちゃんの体調をチェックしてくれます。

このMidwifeの訪問検診は、基本的には毎日、通常生後10日目前後まで来てくれます(異常なければ、途中から2、3日空くことも。頻度や期間は地域に寄って異なるみたいです)。何か問題があったり、それ以上来て欲しい希望がある場合は、生後28日目までは、いくらでも必要と希望に応じて来てくれるそうです。もちろんこれらのサービスも全て無料。我が家の場合には、颯太の黄疸が少し続いていたので、14日目まで来て下さっていました。

自宅への訪問検診でMidwifeがしてくれる内容は、主に以下の通り。

<母体に関して>

— お腹を触って母体の子宮の戻り具合のチェック、
— 血圧検査、
— その他体調全般の問診
— マタニティブルーはどうか、 不安なことはないか、など精神面のケア


<赤ちゃんに関して>

— 体重の増え具合など発育状態のチェック
— おっぱいを実際に飲んでいる様子を見て飲み方などのチェック
— おっぱい、おむつの回数などの問診
— 血液検査
— 黄疸のチェック

などなど。


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我が家のリビングにて、颯太、ミッドワイフから体重を計ってもらっているところ。
袋からぴょこっと出ているのは、にわとりの足・・ではなく颯太の足です・・。

まるで市場で鶏肉を計り売りするかのような量り器ですが(笑)赤ちゃんの体重計です。てっきり台ばかりを使うのかと思ってたら、吊りばかりが登場してびっくり。


その他、母親側から質問があれば、どんなことにでも答えてくれます。自宅で赤ちゃんを寝かせている環境についての質問や、今の部屋の温度でこの洋服を着せているのだけど問題ないか、ブランケットはこれを使っているのだけど暑すぎないか・・などなど。こればかりは実際家に来て訪問して実際の状況を見てもらわないと分からないことなので、本当に助かりました。

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訪問検診のMidwifeは毎回違うのですが、偶然にも何度か続けて担当になってくれたWendyと記念撮影!彼女が颯太に接する様子を見ていると、「仕事だから」っていうだけじゃなくて、本当に赤ちゃんが好きでたまらないんだろうなぁという愛情が伝わってきて、感激してしまいました。このWendyや、出産前に担当してくれていたOrliのようなMidwifeを見ていると、助産婦って、出産前後の母親や赤ちゃんを支えて、いのちを繋いで行くお手伝いをする、なんて素晴らしい職業なんだろう、と心から思います。

助産婦の訪問検診期間が終わると、次には地域のヘルスビジターさんが家に訪問し、地域のサポート施設の説明や、ワクチン接種の説明などもしてくれます。

更にその後は、地域のGP(家庭医)の6週間検診へ・・と引き継がれて行きます。


日本のように入院中に至れりつくせりなのも、母体を休めるという意味では良いけれども、本当の意味で大変になって不安や迷いが出てくるのは自宅に戻ってから。

入院は1日だけでも、肝心の自宅に戻ってからの期間を丸1ヶ月近く、母子共に、心身共に、しっかりサポートしてくれるこのイギリスの制度は、本質的な意味での必要なケアをきちんとカバーしているなぁと思います。

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<助産婦訪問検診制度のもう一つの目的とは・・>

ところで、この訪問制度は、基本的には母体と赤ちゃんの健康をチェックするためのものですが、実はもう一つ、裏の(?)目的があるそうです。

全世界からの移民も多く、貧富の差も激しいロンドン。出産をするともらえる給付金などを目的に、10代の娘に無理矢理子供を産ませて、その後は育児放棄したりするパターンも多いそうです。出産が無料な分、それを悪用しようとする人たちもいるという、信じられないような本当の話。

Midwifeやヘルスビジターは、各家庭へ訪問した際に、家庭環境もしっかりチェックしていて、明らかに赤ちゃんにとって悪い環境であることを確認すると(母親がキッチンドリンカーだったり麻薬中毒者だったり虐待していたり)赤ちゃんをその場で没収して保護するのだそうです。

ミッドワイフの管理責任期間である生後28日以内に、赤ちゃんに何かあった場合には、担当ミッドワイフも一緒に訴えられるケースもあるのだとか。


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というわけで、イギリスの良い面と悪い面を同時に反映しているかのような、ミッドワイフ訪問検診制度。

毎日訪問して様子を見てくれると言うのはやはり安心なので、
部分的には是非日本でも取り入れてほしい制度だなぁと思う一方、
日本人女性の真面目な気質からすると、「知らない誰かが訪問しに来る」と思うと、「パジャマのままじゃなくてちゃんと着替えなくちゃ」「部屋きちんと片付けなきゃ」とか「お茶菓子用意しなきゃ」とか思いすぎてしまい、出産直後の体にかえって負担になっちゃう可能性もあるし、仮にこの制度をそのまま日本に取り入れても、「公」と「個」をしっかり区別する日本の文化背景では、意外と浸透しにくいかもしれないなぁ・・とも思ったりします。


<追記>
↑の件について、何人かの方からご指摘を頂いたのですが、日本でも既に子育て支援事業の一貫として、自治体によっては無料の助産師さん訪問検診制度があるのですね! 少し調べてみたら、日本でもこの訪問制度は、新生児の発育チェックや産後鬱などの相談に加えて、もう一つの目的は虐待の早期発見なんだそうです。違う違うとばかり思っていた日英出産事情ですが、最後に意外な共通点が見つかって驚きました。
by sayaka-blmusic | 2011-02-06 22:39 | イギリス妊娠出産育児
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