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ジャズピアノ英国王立音楽検定体験記 準備編


イギリスでは、ピアノやバイオリンなどの楽器を習っている子供達の多くが毎シーズン挑戦している英国王立音楽検定「ABRSM Grade Test」。 

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この試験は、 エリザベス女王を総裁に持つABRSM(Associated Board of the Royal Schools of Music)という、Royal Academy of Music、Royal College of Musicなど、イギリスの主な4つの音楽院が共同で運営している団体で、100年以上の歴史を持つ世界最大の音楽検定。UK全土はもちろん、世界90ヶ 国以上で、毎年62万人以上が受験しているというマンモス検定です。日本のヤマハ音楽教室のグレードテストも、元々はこの検定を参考にして作られたのだとか。

ちなみに英国王立音楽検定自体は、既に日本でも広がり始めていて、Rolandなどの窓口を通して日本でも受験できるようになっています。

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上の写真は、クラシック部門のグレード教材の一例。イギリスでは、このグレード試験対策のテキストが様々な出版社から出版されています。

Grade1〜8まであり、Grade1だったら、ピアノを初めてすぐの小さい子供でも受けられるので、レッスンの上達目標や励みに丁度良いです。

今までの私の生徒さんの例で言うと、小学生の生徒さんで、ピアノを始めて2年位でブルグミュラーが弾ける位で、だいたいグレード3の受験が可能。「エリーゼのために」などがスラスラ弾けるレベルで、グレード4〜5の受験が可能、古典派のソナタやロマン派の小曲が弾けるようになると、グレード6〜8が受験できる、といった感じです。早ければ中学校1年生位でグレード8を取っている子もちらほら。

とはいっても、ただ曲だけ弾ければいいという訳ではなく、他にもスケールやアルペジョ、Sight Reading(初見演奏)、Aural Test(ソルフェージュを含む口頭試験)などもあり、万遍なく用意しなくてはいけないので結構大変。 私のロンドンでの生徒さん達も、今まで何十人と受験してきていているのですが、皆グレード試験を通してかなり力が付きます。




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さて、あまり知られていませんが、この英国王立音楽検定は、ジャズ部門もあるのです!ジャズの公式な検定試験は、世界でも稀なんだそうです。エリザベス女王を総裁に持つジャズ試験って、なんだか新鮮な組み合わせ・・(^ー^;)

私自身、作曲の参考にということで、クラシックと平行してジャズピアノの勉強をロンドンで初めて以来、BeBopジャズはShan先生、モード奏法と即興演奏はTom先生と、それぞれ別の先生に習っているのですが、そのうちTom先生とレッスン後に話していた時に、

「ABRSMのグレードテストのジャズピアノ部門、内容がかなり充実していて良いから、君の生徒さんでジャズピアノにも興味がありそうな子には、是非受けさせたらいいと思うよ〜」

と教えてくれました。とはいっても、試験内容は当然クラシック部門とはかなり異なる部分も多い模様。ならば自分の生徒さんに受けさせる前に、まずは私自身が体験してみよう!と思い、受けてみることにしました。

クラシック部門が、Grade1〜Grade8まであるのに対して、ジャズ部門は最高グレードでもGrade5までのみ。取りあえず、Grade5の受験を申し込んでみました。

基本的には子供達の受ける試験だし、2、3日前からちょこっと用意すればいいかな〜と、完全にナメてかかっていたら、甘かった!!!

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Amazonで注文した課題曲集や教材が一通り届いて早速見てみると、これが結構準備も大変!

ジャズピアノ試験は、以下の4つのセクションから成っています。


1.演奏実技

クラシック部門では「バロック/古典」「ロマン派」「現代曲」の3つの時代から選ぶのですが、ジャズピアノ部門では「ブルースジャズ」「スタンダードジャズ」「コンテンポラリージャズ」の3つのスタイルからそれぞれ一曲ずつ演奏。課題曲集にある候補の中から自分で選べます。

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演奏の際は、普通のジャズのセッションの時のように、1回目は楽譜通りテーマを演奏。その後、テーマのコード進行に沿って2、3コーラス分、即興演奏。そして最後に、テーマを少しアレンジして演奏し終了。という流れです。

私が選んだのは、Miles Davisの「All Blues」と、「Blue Bossa」、「Waltz for Autumn」の3曲。

即興部分に関しては、Tom先生曰く、事前に作って弾く音符まで完全に決めてしまっていると、演奏の即興性の勢いが無くなるし、試験官にも分かってしまうので、原案だけ決めておいて、後は当日のフィーリングで即興にした方が絶対良いとのこと。ちなみに、最後にテーマに戻ってくるところは、テーマに戻るといっても、全く楽譜通りに弾いたらむしろ減点だとのこと。

楽譜通りに弾くと減点、というのは、クラシックをやってきた身からするととても新鮮。クラシックのように楽譜通り譜読みしてその通り暗譜して何回も練習する方が、私の場合慣れているせいかずっと気楽です・・(^ー^;)



2. スケール&アルペジョ

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クラシック部門では長音階と短音階と半音階だけなのですが、ジャズ部門ではこれに加えて、ドリアンスケール、ミクソリディアンスケール、リディアンスケール、ペンタトニック、ブルーススケールなどなども、基本的に全調で弾けるように用意しなければいけません。ドリアンやリディアンはまだしも、♯やbの多いマニアックな調のブルーススケールとかなんて、普段滅多に弾く機会ないので、久しぶりに真面目に「音階練習」しました・・・。



3. Quick Study

クラシック部門では「初見演奏」に当たる部分です。要するに、初めてその場で渡された楽譜を30秒位でざっと読んで、その場ですぐ演奏する試験。

ジャズ部門の場合は、「初見演奏&即興演奏」という感じで、最初の一段は楽譜通りに演奏、2段目からは、同じコードに沿って即興演奏が求められます。スタイルは、Bluesか、Latin Jazz、普通のSwing Jazz、Jazz Rockのどれかがその場で指定されます。これは当日まで用意しようがないので、過去問題集を見ながら練習。

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一つ一つの曲は、シンプルで簡単なものなのですが、その分、曲やスタイルによってはやたら即興しにくいものもあって意外に難しいです。



4. Aural Test


これも、クラシック部門にもあるテストです。口頭形式で、試験官の弾く演奏を聞いて、曲のスタイルを答えたり、音程を答えたり。

クラシック部門と一番違ってユニークな点は、試験官との「即興連弾セッション試験」があること! 試験官とピアノの前に連弾形式で並んで座り、まずは試験官が数小節演奏をスタート、その後試験管がベースのリズムを刻み続ける中、4小節ごとに、受験者と試験管が交代交代で、右手部分のソロを即興演奏します。当然楽譜は見れず、試験官が何調のどんなスタイルの曲を弾き始めるかも分からないため、耳と反射神経が頼りの試験。



ということで、ある意味では、クラシック部門以上に大充実の内容のジャズ部門。先週木曜日がいよいよ試験本番で、受験してきました。本番編は次回の日記にて・・。
by sayaka-blmusic | 2010-11-21 23:23 | ロンドン音楽事情
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