前日にスペインのバルセロナを出発した船は、約一日かけて翌日の昼にアフリカ大陸北部チュニジアのチュニスへ到着。飛行機だったらあっという間に着く距離かもしれないけれど、こうやって何倍もの時間をかけて船でゆっくり移動するのもいいものだなぁと思います。 港には、チュニジアの船も停泊していました。外に出てみると、一気に南下しただけあって、南仏やバルセロナよりずっと暑い!ノースリーブでもOKの暑さです。 さてチュニジアは今回私が一番楽しみにしていた寄港地の一つです。 前回ローマに行った時には全く下勉強していかなかったために、ローマ時代の遺跡を見ても何が何だか理解しきれずもったいなかったので、今回は夫から「チュニジアに行くなら、塩野七生の「ローマ人の物語」の3巻〜5巻(ポエニ戦役のあたり)は最低限絶対に読んでおいた方がいいよ〜!」と念を押され、その3冊分だけは出発前に何とか読み終わり、カルタゴ(現在のチュニジア内)とローマのおおまかな歴史について下勉強(?)も完了! いやーこれが思ったよりとっても興味深かったのです。 ポエニ戦役は、紀元前264年からローマとカルタゴの間で行われた地中海覇権を巡る戦争。ローマ帝国がその後あれだけ大きくなったのはこのカルタゴとの戦いが最初のきっかけだったので、もしこの結果が異なっていたら、今頃大きく歴史が異なって、ヨーロッパを支配していたのがこのチュニジアだったのかもしれません。 ちなみにローマは、この戦争の後、カルタゴの土地が二度と復興できないよう、なーんと街中に塩を撒いて埋め尽くし不毛の土地としたそうです・・。通常敗戦国に対してもそこまで残虐な行為をしなかったローマ帝国がここまで徹底して街を滅ぼそうとしたしたのは、それだけカルタゴに対して脅威を抱いていたということなのでしょう。 <カルタゴの遺跡めぐりへ> さて、ここチュニジアでは寄港時間も短く廻りたいところも色々あるので、安全策を取ってエクスカージョンツアーに参加することにしました。色々な種類のツアーがあったのですが、私達の選んだのは、カルタゴの遺跡と、「青の町」として有名なシディブサイドを廻るツアー。 バスの中から写したチュニスの港からの街並。気のせいか街で使われている色もチュニジアの国旗カラーでもある赤が多い気がしました。 まずはカルタゴ時代の港へ。紀元前の姿がそのまま残っています。 ここからポエニ時代のカルタゴ軍がヨーロッパ大陸に向けて出航していたのだと思うと感動——! 夫があれだけ「絶対本読んでから行った方がいい!」と口を酸っぱくして言っていた意味が分かりました。何も知らずに来ていたら、ただの普通の湖に見えてたかも・・。 次にローマ時代の「アントニウスの共同浴場跡」へ。紀元前146年にカルタゴを滅亡させ二度と都市が発展しないようにと塩まで撒いておきながら、その後ローマは「やっぱりカルタゴの地は交通の要所として重要だ」と、この地を植民市とし、まるで「第二のローマ」のようなローマそっくりの都市を作ろうとしたのです。この浴場跡は、ローマが支配していた頃の重要な遺跡の一つ。古代の浴場跡はイギリスのバースでも見たことがあるけど、ここは規模が違いました! どーーん!!!向こう側に海が見える絶景ポイントの大浴場です。こんな素敵な場所に、ローマ時代の「スーパー銭湯」があったのですね・・。水を引くシステム、排水システム、お湯を温めるシステム、サウナ、水風呂など全て完備されていたらしく、二千年近く前に今のスーパー銭湯なみの施設を作っていたローマ人、やっぱりスゴ過ぎです。 お風呂の排水溝も当時の姿のまま残っています。 上の写真は、紀元前のカルタゴの中心地、「ビュルサの丘」です。ここからの眺めは素晴らしく、現在では、時代の異なる3時代の建物が一同に見える珍しい地点となっています。一番奥の白い建物が現代のチュニスの街並。中程の茶色いエリアが、ローマ人に滅ぼされる前の紀元前のカルタゴの住居跡。そして手前の柱は、ローマ時代のものです。ローマ人はこの地域に建物を建てる際に、カルタゴ時代の建物などは全部土に埋めてその上に建造物を建てたため、このローマ時代の柱は、向こう側のカルタゴ時代の住居跡より一段高いところにあります。 <青の町シディブサイド> その後、カルタゴ博物館などを見て大満足した後、「青の街」として有名な「シディブサイド」へ。 この街は、建造物は全て「壁は白」「ドアは青」と決められて統一されています。青は魔除けの効果があるからだとか、蚊除けの効果(!)があるからだとか、色々な説があるそうですが、実際はどうなのでしょう・・。 きっと青い空の下だったら、もっともっとキレイだったのだと思いますが、残念ながらこの街に入る前辺りから雲行きが怪しくなり、街を歩いている時は大雨・・(ToT) それでも、各家の青い門の可愛らしい模様を一つずつ見ながら雨の中歩くのもとても楽しかったです。 そして再びバスで船の待つカルタゴの港へ。 ライトアップされたMSCスプレンディダ号。 乗船口はこんな感じです。 そして出航。遠ざかって行くチュニジアの夜景。夜の間に船は東に航海を続け、明け方にマルタ島に着く予定です。 ーーーーーーーーーーーーー <チュニジアはアフリカの超優等生?!> そもそもチュニジアってどういう国なのか、私自身も行くまで殆ど知らなかったので、今回調べてみたことを少しご紹介させて頂けたらと思います。 チュニジアは北アフリカにある独立国。アフリカの国というと、貧困、飢餓、治安の悪さなどのイメージが強いかもしれませんが、実はチュニジアはアフリカの中で驚く程異例の成長を遂げた国です。 チュニジアでは、電化率94%、義務教育における就学率92.3%、国民の80%が中流階級層で、貧困率はわずか4%。貧富の格差は途上国としてはきわめて少ないそうです。治安の良さもアフリカの中でピカイチ。 またアフリカ、アラブなどの途上国としては唯一、人口増加率が世界平均を下回っていて、家族計画普及の唯一の成功国で、発展の「モデル国」または「超優等生」といわれているそうです。 うーーん、スゴい! でもどうしてチュニジアだけが異例の健全な発展を遂げたんだろう・・と疑問に思い、帰ってから色々ネットで調べてみました。 資源が豊富だから国がお金持ちなのか、と思ったら、実はその反対だそうです。 チュニジアはむしろ限られた天然資源しか持っていないため、早くから「人間の潜在力」を伸ばすことに目を向け、国家予算の大部分は教育、医療、住宅供給、社会福祉に割かれているそうです。その結果、農業、製造産業、観光業でバランス良く経済がまわっており、今も成長を続けているそうです。 アフリカの他国では、ダイヤモンド、石油、コバルトなど、せっかく天然資源に恵まれているのに、それをうまく開発に繋げられず、かえって紛争の元になったり、政治が腐敗し国が崩壊し、せっかくの他国からの支援も効果的に使われていないという残念な国も多い中、早くから自国の「人」の持つ潜在力に目を向けたチュニジアは素晴らしいと思います。 (もちろん旅行だけでは見えない裏の面もあると思いますし、そもそもチュニジアはじめ、エジプト、リビア、アルジェリア、モロッコなどの北アフリカ5カ国は、歴史的にアラブやヨーロッパの文化の影響も受けていて、サハラ以南の国々と同じように比較するのは適していないかもしれませんが・・。) 天然資源がいくらあっても、「人」が育たなかったら確かに意味がない。 同じように、先進国が一時的にお金や物資だけ送っても、その国に住む「人」が育っていかなければ、長期的な発展は難しい。良くいわれる例えですが「魚を与えるのではなく、釣り竿を与えて釣り方を教える支援」が本当に重要なのだろうなぁと思います。 日本でも、民間レベルでも発展途上国の「人々の潜在能力」を育てる支援を行うNPOなどが沢山増えてきているそうです。このチュニジアのように、理想的な自立的発展を遂げる国が一つでも多く出てくることを祈るばかりです。先日のピグミー支援チャリティコンサートに続き、音楽や作曲を通じてのアフリカやアジアの途上国支援の可能性を、私自身もこれからも模索していきたいと思っているところです。 さて次回の日記は「クルーズ5日目マルタ島・青の洞門」です!
by sayaka-blmusic
| 2010-10-08 00:11
| 地中海クルーズ2010
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