ゲルギエフ指揮 World Orchestra for Peace

イギリスの夏といえば、 大音楽フェスティバルの「PROMS(プロムス)」! イギリスのTV局BBCが主催する音楽祭で、約2ヶ月間毎日、ロンドンのロイヤルアルバートホールを主会場として、世界中から様々なトップアーティストやオーケストラが、日替わりで演奏するのです。しかもチケットは驚きの5ポンド(約800円)から。

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上の写真が、プロムスの主会場となるRoyal Albert Hall。1871年に建てられた円形劇場です。イギリスに来て以来、毎夏最低10回はPROMSのコンサートに足を運んでいるのですが、去年は一時帰国していて一度も行けなかったのと、今年も7月中はバタバタしていて行けなかったので、昨日はとっても久しぶりのPROMSでした。

昨日8月5日の出演アーティストは、ゲルギエフ指揮World Orchestra for Peace。曲目はマーラーの交響曲4番(約55分)、そして後半が同じくマーラーの交響曲5番(約70分!)、というボリュームたっぷりのプログラム。

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開演前の会場。

ちなみに、このPROMSは、一階のフロア部分と最上階の回廊部分は当日売りに出される立ち見席で、5ポンドで買うことができます。人気のある公演では、昼頃からこの立ち見席を求めて長蛇の列ができることも。

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なので、上の写真の真ん中あたりにいらっしゃる数百人の皆さんは、2、3時間並んだ上に、コンサート中2時間以上、微動だにせずに立ったまま聴き続けるのです!!しかも若い人ならともかく、大部分は60過ぎた年配の方々・・。いやぁ、尊敬です。イギリス人は、銀行や郵便局の列といい、とにかく立ったまま並ぶのが大好きなのか慣れているのか、足腰が強いDNAでもあるとしか思えません。

ちなみに5年前のPROMSで、私も一度だけこのアリーナ立ち見席にトライしたことがあるのですが、前半の途中で既に足腰が痛くなり、後半のブラームスの交響曲1番最終楽章では、歓喜の歌のはずが足腰の痛みと戦うのに精一杯。

それ以来、同じ当日5ポンド席でも、一番上の回廊席専門に。ここだと、シートを持って行くと、なんとゴロ寝したりしながら、ピクニック状態で聴くことができるのです♪ ちなみに今回は、この回廊席から限りなく近い、最後列の普通席。ステージからはちょっと遠くて音響もあんまり良くないけれど、眺めだけは最高の席でした(笑)

さて、話は戻ってWorld Orchestra for Peace。

このWorld Orchestra for Peaceは、1985年に国連設立50周年を記念し、世界的指揮者のショルティを中心に、平和を願う活動に賛同した世界中のトップアーティスト達が集まって「平和の使節」として結成されたオーケストラ。

世界中のオーケストラからトップアーティスト達がスケジュールの合間を縫って、集まっているのですが、公式HPによると、このオケ内ではヒエラルキーは存在しなく、通常のオケでは実力順で決まる席順もここでは全てRotate制(毎回入れ替わりでぐるぐる席順が変わる)。またセクションリーダーも、コンサートごとに入れ替えるのだそうです。そして、チャリティ活動ということで、アーティスト達は基本的にノーギャラでのボランティア出演。

まさにマイケルジャクソンの「We are the world」のクラシックバージョンのような感じです。

1997年に亡くなったショルティに代わって、現在の音楽監督はロシア人指揮者のゲルギエフ。彼は自分の卒業した小学校がテロにあい、その小学校で追悼コンサートを行うほか、様々な戦争の犠牲者の追悼コンサートなども行っているようで、このオーケストラの他にも、平和のためのコンサートを色々行っているようです。

ピグミーの支援コンサートなどのこともあり、クラシック音楽が国際的な援助や活動のためにできることって何だろうと、ちょうど考えていたところだったので、このオーケストラやゲルギエフの活動は、本当に素晴らしいなぁと心から共感しました。

♪♪♪♪

前半のプログラム、マーラーの交響曲4番は、「天上の音楽」と言われているだけあって、マイナスイオンとアルファ波を身体中で浴び続けているかのような美しい曲。平和をテーマにしたこのオケにぴったりの曲でした。

そして後半の交響曲5番。映画「ベニスに死す」でも使われている、名曲中の名曲、第4楽章では、まるでオーケストラの祈りの歌のようなハープと弦楽器の静謐なアンサンブルに、思わず涙がこぼれてしまいました。

マーラーの音楽って、「メロディで聴かせる」というよりも、和音変化で聴かせる音楽だなぁと改めて感じました。思いもよらないテンションノートの使い方や、思いもよらない転調。でもそれらが、決して現代曲チックな訳分からない音楽の中ではなく、ウィーンの伝統に基づいた純クラシックの曲調の中であくまでも自然に起こるから、逆に引き立ってすごく新鮮に感じる。

ゲルギエフとWorld Orchestra for Peaceの演奏は、そんなマーラーの雄大な音楽を忠実に描き出そうとする、とても真摯な演奏だったと思います。


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終わった後、大歓声の中でカーテンコールが続く舞台。

クラシックやっている身でいうのもなんですが、
やっぱりクラシックのコンサートもいいなぁ・・、
と、なんだか改めて心から思ってしまいました。

なんていうか、すごくあったかい空気に包まれたコンサートでした。
きっとそれは、何よりもゲルギエフやオケのメンバーなど出演者一人一人が、本当に心から平和を願うあったかい気持ちがあったからこそなのかもなと思います。

コンサートの中で、彼らの活動の説明とか平和活動へのチャリティの呼びかけとかあるのかなぁと楽しみにしていたものの、特にそういう場面は無かったのですが、

でも、まずは、聴きにきた私達が、彼らの音楽によって、こんなに平和な満たされた気持ちで帰路につけさせてもらってことが、何よりの平和への第一歩なのかもな、と思いました。
by sayaka-blmusic | 2010-08-07 04:03 | ロンドン音楽事情
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