ロンドン中の道ばたにピアノが出現!!


もしも公園の真ん中にピアノがあって、
通りかかったおじいさんが懐かしの曲を奏でたり、
子供たちが今習っている曲を弾いてみたり、
そしてそれをきっかけに、そこに集う人々の間にコミュニケーションが生まれ、
ひとときの素敵な空間がうまれたなら・・。

でも実際、そんなこと、雨の問題もあるし、
ピアノの盗難の心配もあるし、実現不可能な話だよな・・。

と思ってしまいそうになりますが、

なーーんとそれを本当に実現してしまっているのがロンドン!!!

City of London Festival の一環として「Play me! I'm yours」という名前のストリートピアノフェスティバルが2008年から毎年行われているのです。今年はNew Yorkでも同時に行われているそうです。

毎年6月から7月にかけての期間のみですが、ロンドン内の公園やパブリックスクエア、遊歩道など、合計21カ所に、21台のアップライトピアノが置かれ、期間中、通りかかった人は誰でも演奏して良いことになっています。当然、弾くのも聴くのも無料です。警備員もいません。完全放置状態(!)です。

ロンドンで仲良くさせて頂いているお友達Chigusaさんからこのことを教えて頂いて、先週末、Chigusaさんと一緒に、21カ所のうちのひとつであるハムステッドヒースのピアノを弾きに行ってきました。

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ハムステッドヒースはロンドン北部に広がる巨大な公園で、入り口がいくつもあるのですが、Highgate Road側の入り口から入って少し歩いたところに、バンドスタンドがあり、そこに古—いアンティークのようなピアノが可愛らしく置かれていました。

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ポロポロと単音の音が聞こえてくるので近づいてみると、40代位のイギリス人のおじさんが、鍵盤を触っていて、「僕は何の曲も思い出せないから、もし何か曲を覚えているようだったら是非弾いて!だいたいの音は鳴るよ! 」とおじさん。

え、だいたい?(^-^;)ってことは出ない音もあるってことよね?

と思いながら恐る恐る弾いてみると、素晴らしく年季の入ったピアノで(笑)音が狂いまくっているのはもちろんのこと、高音域や低音域は音の出ない場所も沢山。

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アップライトの前面のふたが壊れていて中がむき出しになっていて、しかもハンマーが数本折れて無くなっています。弦が切れて音が鳴らないピアノは見たことあるけど、ハンマーが折れて鳴らなくなっているピアノは生まれて初めてみました。

このフェスティバルで使われているピアノは、全て寄付によるものだそうです。

不思議なことに、バッチリ音の出る新品のピアノより、この壊れかけたピアノの方が、公園の緑と風の中に合っている気がしてすごく気持ちよくて、弾いているうちに最高のピアノのような錯覚に陥ってきました(^-^)

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私がドビュッシーやオリジナル曲を弾いたり(ラフマニノフはこのピアノではちょっと不可能。というかピアノが壊れるかも 笑) Chigusaさんが日本の歌を演奏したり、Chigusaさんと連弾したりしている様子を、おじさんはニコニコしながら一生懸命聴いてくれて色々感想をくれました。

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せっかくだからおじさんも一緒に連弾しましょう!ということになり、
いつも夫とのセッションで使っているジャズのReal Book(コードとメロディの書いてあるソングブック)を持ってきていたので、おじさんにメロディを弾いてもらい、私が伴奏をつけて連弾をしてみることに。おじさんの思い出の曲だという「God Bress' the Child」や「Little Boat」、私の好きなKeith Jarretの「Memories of Tomorrow」などなど。

他に弾きたい人も現れなかったので、ずっと3人で組み合わせを変えながらあれこれ連弾で弾き続けていたら、あっという間に1時間半近くが経過。

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終わった後、Chigusaさんとおじさんと3人で。こうやって知らない人と音楽を通じて知り合えたり、風と緑の中で、きままに好きな曲を弾けるなんて、本当に素敵なことだなぁと心から感じました。

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ところで、Chigusaさんから、この場所も素敵だけれども、更に絶景のところにピアノが置いてあるとの情報を入手。なんでも、ロンドンを象徴するあの「タワーブリッジ」が正面に見えるテムズ側沿いに、ピアノが設置してあるとのこと。

これはフェスティヴァル終了前に是非行ってみなければ!ということで、
先週末、夫と一緒に行ってみました。

ロンドンの金融街Monument駅からテムズ側沿いの遊歩道に出てタワーブリッジ側に少し歩いたところにピアノを発見!

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ピアノの真後ろにタワーブリッジ!! まさに絶景です!!!!!!

水辺でピアノが痛みやすいせいか、ハムステッドヒースのピアノにも増して音が狂っていたピアノでしたが、テムズ側やタワーブリッジを眺めながらピアノを弾いていると、なんだか現実味がないような、どこかに意識がトリップするような不思議な感覚になりました。

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今週9日のピグミーイベントで弾く予定のオリジナルを何曲かソロで弾いてみました。こんな絶景を眺めながらピアノを弾けることは、この先恐らく機会が無いでしょう。。

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その後、時々ぽつぽつ通りかかる観光客や通行人の方々から声援を頂きつつ、夫のトランペット(夫は趣味でトランペットをやっています)とピアノのアンサンブルで、「Misty」「A Child is Born」などのジャズのスタンダードを数曲演奏したり、即興セッションをしたり、日本の「赤とんぼ」を弾いたりして、大満足で帰ってきました。

それにしてもこんな絶景で、弾きたい人続出でさぞかし並んでいるかと思いきや、私達の他に殆ど誰もいなかったのが不思議。まだ3年目ということもあり、イギリス人の間でもまだあまり知られていないイベントのようなので、もっと口コミで広がれば、もっと沢山の音楽好きの人たちに弾いてもらえるのではないかなと思います。

2010年は7月10日までピアノが設置されているそうです。
子供でも大人でも、初心者でもプロでも、本当に誰でもどんな曲でも好きなように弾き放題とのことなので(実際聴いている人も少ないので全然恥ずかしくないと思います)ロンドンにお住まいの方でピアノがお好きな方は是非HPをチェックしてピアノを弾きに行ってみて下さい!

City of London Festival「Play me! I’m Yours 2010」ホームページはこちら
(ロンドン内のピアノ設置場所一覧の地図もあります)
http://www.streetpianos.com/london2010/

昨年のストリートピアノについてChigusaさんがレポートされている素晴らしい記事はこちら!
このイベントが始まることになったきっかけなども載っています。
http://www.piano.or.jp/report/02soc/london/2009/08/26_9937.html

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ところで、雨が降ったら、これらのピアノはどうするのかという問題についてですが、基本的に放置みたいです(笑) 一応ビニールシートが置いてあって、雨が降ってきたら気づいたら誰かがかけてあげるようになっているのですが、ピアノのふた部分位しか覆えないので、多分殆ど意味無し^^; 濡れたい放題です。

また盗難についてですが、去年のHPを見てみると、やはり一カ所で盗まれてしまった場所があったようです。その後もピアノは行方不明とのこと。犯人はよっぽどピアノが欲しかったのか、それとも売りたかったのか分かりませんが、ピアノには「Play me I’m yours!」と思いっきりペイントしてあるし、しかも壊れまくっているピアノを、その後持っていても売っても、リスクしかない気が・・。

今回初めてこのイベントを体験してみて、このようなストリートピアノが日本では実現しにくい理由がなんとなく分かった気がしました。

良くも悪くも完璧主義でなく何事も「まいっか」で済ませられるイギリスだからこそ、そしてピアノメーカーの少ない国だからこそ、このイベントが成り立っているのかもしれません。

日本のように、大手ピアノメーカーが多い国だと、ストリートピアノに提供されるピアノもきっとこれらの日本製のピアノが多くなり、そうなると、メーカーとしてはやはり当然、メーカーの名をかけて最高の状態のピアノを置きたくなる。そうなると、やれ調律はどうする、雨が降ったらどうする、盗難の場合は?警備員の配置は?など、永久に問題が山積みになってしまって、なかなか実現には至らないのかも。

でも個人的には、世界的なピアノメーカーを持つ日本だからこそ(ヨーロッパでもYAMAHAやKAWAIの評判やシェア率はものすごく高いです)、そして地域社会での世代を超えたコミュニケーションが希薄になってきてしまっている日本だからこそ、是非実現して欲しいイベントだなぁと思います。
by sayaka-blmusic | 2010-07-06 20:48 | ロンドン音楽事情
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