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ラフマニノフの巨匠、ハワードシェリー先生のレッスン再び


以前、このブログで、ラフマニノフの巨匠、ハワードシェリー先生との出会いのエピソードを書かせて頂きましたが、あれから半年の月日がたち、今回久しぶりに再びレッスンをして頂くことができました。

前の日記にも書いた通り、ハワードシェリー先生は、世界でただ一人ラフマニノフの全てのレパートリー(ピアノソロ曲、コンチェルト、室内楽曲全て含む)を全曲完全録音をしたという、ラフマニノフの巨匠! ずーーっと前から彼のレッスンを受けることは夢だったのですが、様々なハプニングを経て、半年前のブリストル大聖堂でのコンサートの前に、ようやくその夢が叶い、初めてレッスンを受けることができました。(その時の日記はこちら。その1その2その3

その際に、もしまたレッスンが必要になったらいつでも言ってねと仰って下さっていたのですが、実際その後先生は、指揮者としての世界ツアーで各国を飛び回っていたこともあり、なかなかチャンスがありませんでした。

ですが、この3月にラフマニノフのソナタを演奏するリサイタルを予定しているとお伝えすると、世界ツアーから戻ってくる2月に、2回レッスンをして下さると前々から約束して下さっていました。

そして先週の水曜、そして今週の木曜(昨日)と、2回続けてそのレッスンが実現!

今回のコンサートで私自身初挑戦のラフマニノフのソナタ第2番を携えて、
半年振りにドキドキしながら先生の家へ。

世界ツアーから帰ったばかりでお疲れのところ、またもや本当に親切に出迎えて下さり、半年前のレッスンのことやその時お渡ししたアレンジの楽譜のことをはじめ、私の夫の仕事のことなどまでしっかり覚えていて下さり、感激!



そしてレッスン本編開始。

半年前に初めて、彼のレッスンを受けた時は、先生のレッスンを受けているという感動自体があまりにも大きくて、冷静になっている余裕はなかったのだけど、今回レッスンの途中に、ふと先生の姿と、後ろに飾ってあるラフマニノフの写真が重なった時に、

もしかして先生、ラフマニノフ本人に似ているんじゃないかな…、

と思いました。
  
ラフマニノフ並に大きな手。そしてその大きな手で一番大事にしているのは、何よりも和声(ハーモニー)の繊細な移り変わり。

ハワードシェリー先生のアプローチは、兎にも角にも、まずハーモニーの移り変わりを完璧に理解し、そこからメロディーの歌い方もフレーズの作り方も逆算的に割り出して行くアプローチ。

恐ろしく緻密に、そして複雑にハーモニーを展開させていくラフマニノフの作曲方法と全く同じアプローチです。

もちろん姿も性格も(ラフマニノフはハワード先生みたいにフレンドリーではなく物凄く気難しかったらしい)全く違うけれども、きっと根本的な音楽との向き合い方が一緒で、だからこそ先生は、ラフマニノフの音楽が分かってしまうんだろうな、そして、だからこそ誰も成し遂げられなかった全曲録音の偉業を達成されたのだろうな、と思いました。

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超一流の音楽家の放つエネルギーとオーラは、やはり並大抵ではなくて、こうやって間近で1対1でレッスンを受けていると、ふとこちらが気を抜くと気絶してしまうんじゃないかという位の強いエネルギーの波動を感じます。

よく一流の演奏家が必ずしも一流の先生ではないというけれども、彼の教え方は指導者としても本当に素晴らしい。私に最も足りない点を、本当に的確に分かり易く指摘して下さる。

限られた時間で、できるだけのことを教えようとして下さっているのが物凄く伝わってきて、精一杯それに答えようとするのだけど、
 
自分に出来る限りのエネルギーをなんとか出し切っても出し切っても、まだまだ彼の要求しているところには届かない。

だめだ…、もうエネルギー切れかも…。 

情けないのだけど一瞬本当に体力と集中力が持たないかと思いました。

でも、この先、またいつこんな機会があるか分からない。
吸収できることは隅から隅まで吸収したい!
と思って、ここ数ヶ月、一度も使っていなかった体内エネルギー貯蓄庫からも緊急総動員!

すると、エンドルフィンだかアドレナリンだかが大放出されたのか、
レッスンの後半は、もはや半分トランス状態になっていて、

ああ、このままずっとここでこうやってレッスン受けていたい…、と心から思っていました。


世界で一番好きなラフマニノフの音楽。

そして、そのラフマニノフの音楽を、
恐らく世界で一番ラフマニノフと向き合ってきた先生から、
直接伝授して頂いている…。

私にとってこんな幸せな時間はありませんでした。



そして無事レッスン終了。

最後のレッスン(昨日)は、1時間の予定のところ、ぶっ続けでなんと約3時間も見て下さり、終わる頃には、意識喪失寸前でふらふらふらふら…。

でも、こんなに幸せな疲れは久しぶりでした。音楽と本当に真剣に向き合うって、本来これだけのエネルギーが必要なものなんだ、と気づかされた思いでした。

終わった後は、素敵な奥様までご紹介して下さり(奥様もピアニスト)、写真を撮って頂いたり、色々お話させて頂きました。


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そういえば以前、日本に完全帰国するかイギリスに戻るか夫と話し合っていた時に、

「さやかはイギリスに残る場合に、一番したいことは何?」

と聞かれた時に、真っ先に答えたのが

「ハワードシェリー先生に、ラフマニノフのレッスンを受けたい!」

ということでした。

その時は、まだ具体的にレッスンを受けることが決まっていた訳でもなく、
雲をつかむような夢のような話でした。

あの時、アカデミー玄関で、タクシーに乗り込む先生を捕まえて、勇気を出して思いきってレッスンをお願いしたのがきっかけで始まった一連のレッスン。

こうやって、まさか本当に何回もレッスンを受けさせて頂けるようになるなんて、本当に夢みたいだけれども、

でも、レッスンを受ける夢が叶ったー!とこれで終わりにしては
決していけないんだと思う。


次のステップは、

先生があれだけのエネルギーで、惜しみなく教えて下さった様々なエッセンスを、
しっかり自分のものに吸収して、
本番で、自分のラフマニノフとして表現しきること。


今までラフマニノフのソナタを知らなかった方や、
聴いたことあるけどよくわからん曲、という印象を持っている方々のうちの、
たった一人でも、
何て素敵な曲なんだろう!と思って頂けるような演奏ができたら、
こんな嬉しいことはないです。

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P.S
3月6日のピカデリーサーカスでのコンサート、是非一人でも多くの方にいらして頂けたら、本当に嬉しいです。コンサートのチケットは、今週の水曜日までウェブサイト上での前売りチケット予約受付中です。それ以降は、基本的に当日券での扱いとなります。
詳細はこちら http://www.borderlessmusic.com/ticket
by sayaka-blmusic | 2010-02-20 08:17 | ラフマニノフについて
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