<完結編> ラフマニノフの巨匠・ハワード・シェリーとの感動の出会い!


パート1><パート2>の続きです。

ということで色々なハプニングを経て、2年半近くの時を経てようやく本当に受けられることになった、ハワードシェリー先生のレッスン当日。 

世界でただ一人ラフマニノフの全曲録音を成し遂げた、ラフマニノフの巨匠にレッスンを受けることができるというのは本当に夢のようで、バスに乗りながら未だに信じられない気持ちになっていました。

レッスン場所はロンドン内にある先生のご自宅。

もう二度とないかもしれないこの貴重な機会、今日一日で学べることを、目も耳も全身使って精一杯吸収しよう!

そう思いながら、インターフォンを押すと、2年半ぶりにお目にかかるハワードシェリー先生が笑顔で出迎えて下さいました。

緊張しながらご挨拶し、案内されたのは、一体何部屋あるんだろうという位、広い広い家の最上階の部屋。

そこには・・

2台のフルコンサートグランドピアノ(大ホールと同じサイズの特大グランドピアノ)が!!!!しかも一台はスタンウェイ。

レッスン室に2台のピアノを置いている先生は多いですが、2台ともフルコンというのは初めてお目にかかりました・・。(すごい!毎日フルコンで練習しているのね・・)思った矢先に、先生、 「最近、指揮の方の世界ツアーで忙しくて殆どロンドンの自宅に戻っていないんだよね・・」とのこと。 ひえええ、本当にお忙しい中、時間を割いて下さったのだなぁ・・と本当に恐縮、そして大感謝です・・。

ふと壁を見渡すと、ラフマニノフの肖像画や写真が何枚も飾ってありました。

緊張しきっている私を気遣ってくれてか、ハワードシェリー先生、まずは私の家族のことやロンドンでの生活のこと、今度のコンサートのことなど、色々尋ねてきてくれました。今度のブリストルのコンサートのことを尋ねられた時に、チラシを参考までにお見せすると、先生

「あ!!このコンサートってブリストルの年に一回のイベントだよね? 昨年僕の息子が指揮したコンサートだ!」

「えええーー!!」

そう、このHigh Sheriff Gala Concertは、ブリストルの執政長官であるHigh Sherrifを記念するコンサートで、年に一回6月に開かれます。

私達は今回の2009年度のゲストとしては呼んで頂いていて、今回の指揮者は、Peter Stark氏ですが、昨年度の指揮者はなんと彼の息子さんのアンドリュー・シェリー氏だったそうです。(家に帰ってウェブを見てみると確かに2008年度Gala Concertの指揮者はAlexander Shelleyとなっていました!)  つまり、私達の出演が一年ずれていたら、彼の息子さんと協演していたかもしれないということでした。

何とも不思議な偶然に、私の緊張も少し解けて場が和んだところで、レッスン開始。

曲は、前述のブリストルのコンサートでオーケストラと協演予定の、ラフマニノフ2番のコンチェルトの3楽章。 

先生自らが、もう一台のフルコンで伴奏パートを弾いて下さいました。

レッスンを進めながら、ラフマニノフならではのメロディの歌い方、和声の緊張感の持っていき方、更に彼自身がいつもコンサートの時に使っているという秘伝の指使い方法まで、本当に熱心に教えて下さり、1時間のレッスン予定のところ、実に2時間以上も、本当に濃いレッスンをして下さいました。

あと、彼自身、ソリストとしてはもちろん、指揮者としてもこの曲を何度も指揮したことがあるとのことで、「オーケストラはこの部分で少し間が必要だから」などなど、指揮者の立場からのアドバイスも。

何もかもが、深く深く納得することばかりで、今後ラフマニノフの他の曲を弾く時にも全部応用できる貴重なアドバイス。 

全部をその場で吸収してその場で直すことはもちろん難しかったけれど、少なくとも彼が伝えようとしてくれたコンセプトは、心の底から分かった気がします。もちろん、今の自分で本当に理解できていた範囲は限られていたかもしれないけれど・・。

あと彼自身の演奏を目の当たりにし、そのエネルギーを感じることで、ラフマニノフの曲を演奏する時に、どれだけ本当の深いエネルギーが必要なのかも身体で感じました。



レッスンが終わって、先生にお渡しできたらと思って用意してきたものを恐る恐る差し出す。

「あの・・これ、私がピアノソロ用にアレンジしたラフマニノフのシンフォニー2番なんですが、もし楽譜をもらって頂けたら嬉しいです」

去年、ミュッセから出版させて頂いた「ラフマニノフ交響曲第2番3楽章」のピアノソロアレンジの楽譜

すると、先生、

「シンフォニーの2番の3楽章?! 実は僕、ラフマニノフの曲の中で一番好きな曲なんだ、是非、今この場で弾いてみて!」

と言って下さり、突然の展開に戸惑いながらも弾かせて頂くと、

「僕自身この曲をオーケストラで何度も指揮したことがあるけれど、このアレンジは本当に気に入った、良くできている!」

と言って下さり、それだけでも涙が出るほど嬉しいのに、更に

「僕も弾いてみる!」

と自らピアノに向かって、私のアレンジ譜を先生自ら初見演奏!

そして更に更に嬉しいことに、一度弾き終わった後、
「とても気に入ったからもう一回弾きたい!」と、もう一度はじめから最後まで繰り返して弾いて下さったのです・・・。

ラフマニノフをピアノ曲も声楽曲も交響曲も、全て知り尽くした彼による「交響曲2番3楽章ピアノソロバージョン」の演奏は、やさしさと、あたたかさと、なつかしさと、深さに満ちていました。

更に各パートの弾き分けのバランスが絶妙。本当にオーケストラに聴こえてきて、彼が弾いてくれていることの感動も相まって、本当に涙が出そうになってしまいました。

その後、ラフマニノフの全曲録音をしていた時のエピソードをお話下さったり、ラフマニノフの育ったロシアの地を訪れた時の写真を見せてもらったり、いくつもあるラフマニノフの肖像画を一つずつ解説して頂いたり・・と、夢のようなひと時でした。


終わった後、 玄関の外まで見送って下さり、温かい笑顔で手を振るハワードシェリー先生にご挨拶しながら、

2年半前のあの時、
ロイヤルアカデミーの玄関で、タクシーの窓越しに、思い切って先生にをかけさせて頂いた時のことをふと思い出しました。

めちゃくちゃ恥ずかしかったけど、あの時、勇気を振り絞って彼に声をかけて、本当に本当に良かった・・・

あの後、スパムメールや電話のタイミングなどで何度もすれ違いになってしまったけれど、もし最初にサクっと実現してしまっていたら、ブリストルのコンサートつながりの嬉しい偶然も発見できていなかったし、今回のアレンジ楽譜も渡せなかったし(出版は昨年秋だったので)、こんな風に色々話をすることもなかったかもしれない。

全てのことには、きっと最善のタイミングがあるんだな・・・と改めて感じました。




最近、イギリスには珍しい位の晴天が続いています。
今日はいよいよあすかがロンドンに到着する予定です。

今回のブリストルのコンサートも、色々な偶然や出会いが重なり合い、ブリストル財団はじめ沢山の方々のご協力などがあって初めて実現することになったコンサート。
精一杯感謝の気持ちをこめて、あと1週間半、用意にのぞみたいと思っています。
by sayaka-blmusic | 2009-06-04 16:50 | ラフマニノフについて
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