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自信というもの



前回の日記に書かせて頂いたムジカノーヴァの特集記事を書かせて頂くにあたって、ロイヤルアカデミー在学中に受けていた「音楽家のためのメンタルトレーニング」の授業で使用したプリントやノートなどを押し入れの箱から掘り起こして色々眺めていました。

そんな中、最初の授業で使用したプリントに、「自分の演奏や、音楽家であることに対する不安などを、なんでも挙げてみましょう」という項目がありました。

その項目の下の空欄部分に、ひときわ大きい文字で当時の私が書いていたのが、

「自信がない」

という1文。


そう、私自身小さい頃から、自分の演奏に自信を持つということが本当に苦手で、

「さやかちゃんの演奏ね〜、きちんとは弾いているのだけど、あと一つ自信をばーんと持って弾ければね〜」

と言われることが、幼い頃から非常——にしばしば。私にとっては、「自信を持って弾けない」ということが、緊張してどうにかなっちゃうということ以上に、大きな問題でした。この走り書きを見る限り、ロイヤルアカデミーに入った頃の私にとっても、一番の問題はそれだったみたいです。


あれから3年、イギリスでも色々コンサートをさせて頂くようになって、「自信」という面で、少しは変わったかというと、


やっぱり変わっていません…(^—^;)


自信がないまま、お客さんの前で弾くのなんて失礼だ、そんなんならコンサートなんてしない方がいい、という意見も、もっともだと思うけど、どんなに練習したところで、練習しきったという事実には自信を持てても、自分自身のピアノに対してはやっぱり一向に自信が持てない。


でも、ここ1、2年。それでいいんだ、そのままでいいんだ、と受け入れることができるようになった気がします。


そのきっかけは、ほかでもないラフマニノフ。
彼の伝記を読んでいた時のこと。


自分の才能に絶対的な自信を持って、天才的に次から次へと曲を書き続けたモーツァルトなどとは対照的に、

ラフマニノフは、常に自分自身の自信の無さ、人からどう思われるかという不安や、傷つきたくないという不安と戦っていたと言われています。

特に、交響曲1番の初演失敗をきっかけに、自信喪失のどん底になり、鬱病で2年間の闘病生活を送り、その復帰作がかの有名な「ピアノ協奏曲2番」。この曲は、彼の精神科医であるダーリ氏に捧げられているというのは、良く知られた話です。

これ以後、ラフマニノフは自信を持って作曲活動や演奏活動を続けていたのかというと、実は全くそうではなかったそうです。

晩年になりピアニストとしても作曲家としても大成功し、どんな賞賛をもらっても、本当に信じきることができず、常に自分の才能への不安と戦っていたそうです。

晩年のラフマニノフの大作である「コレルリの主題による変奏曲」を、自分自身のコンサートで演奏する時にも、

「長過ぎるんではないか、お客さんは退屈して寝てしまうんではないか、席を立ってしまうんではないか」と常に不安で、

観客の顔色を伺いながら、途中で咳が聞こえたり、観客が退屈そうな気配を感じ取ると、その場でバリエーションをいくつか削除して演奏していたこともあったそうです。

ラフマニノフの伝記の中でその話を読んだ時、別に泣かせどころの箇所でもなかったのに、号泣してしまった私。

ラフマニノフでさえ、そうだったんだ…。

彼ほどの才能のある、世界中から賞賛されていたのに、
最後の最後まで、自分に自信は持てなかった。

人から拒絶されるのが怖くて、傷つくのが怖くて、
怖そうな外見の裏に、今にも折れそうな繊細で弱い心を抱えていたラフマニノフ。

ただの駆け出しのピアノ弾きである私みたいなのが自信を持てないのとは、比べ物にならないくらいの辛さだったろうなと思います。

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ラフマニノフの音楽には、迷いが不安が聴こえます。

どこへ行きたいのか、何を求めているのか。
自分でも分からなくなってしまうような混乱や、迷い。
外界を恐れるかのような不安。未来への不安。

そんな「迷い」のメロディや和音の中から、少しずつ一筋の道が見えてきます。
その道はだんだん太くなり、やがて、あらがえないような、とてつもない大きな力に導かれて、一つのところへ導かれて行き、その到達点には、必ずまぶしくて目を開けていられない位の圧倒的な「光」があります。

ラフマニノフの曲には、どの曲にも、必ずこの「光のポイント」があって、どんな小曲でも、このポイントに来ると、聴いていても弾いていても、無条件で涙が出そうになってしまいます。まるで自分の存在をそのまま認めてもらえた時のような、究極の安心感と、優しさ。


きっと、この「光」はラフマニノフ自身が求めている光なのかもしれないなぁと、思います。不安で迷い探し続けている先に、きっとあると信じている、光。

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私自身の話に戻ってしまいますが、

「ピアノを弾いている自分に疑問をもったり、やめようと思ったりしたことはありませんか?」

という質問を受けることが時々あります。

それについてまともに答えを考えると、
ずぶずぶと永久に考え込んでしまいそうになるので、たいてい、

「物心ついた時から弾いているので、ピアノ弾くのはゴハン食べたり息すったりしているのと同じような感じなので、疑問に思うことはなかったです」

と、あっけらかーーんと答えていることが多いのですが、

実際のところは、何万回とある気がします。


それは、

才能とかいう言葉以前に、自分にピアノを弾く資格があるのかという不安だったり、

世の中にこれだけ素晴らしいピアニストが溢れている中、もう一人、このロンドンの片隅でピアニスト人口が増えることが、この世の中にとって果たして本当に貢献していることなのかという疑問であったり、

世界中で飢餓や病気で苦しんでいる人がいるのに、私一人グランドピアノに向かって練習していていいのだろうかという疑問だったり、

そもそも自信がないままピアノを続けていていいのか、いつか本当に自信を持てるようになる日が来るのかという問いであったり。


それでも、どうしてもラフマニノフが好きで好きで、弾き続けて来て、
どういう訳かメロディがわき上がって来てしょうがなくて作曲をしてきて、

自分自身が感動したラフマニノフ曲は、もっと多くの人に知って欲しくて、

その結果、ステージでの演奏も続けて来て、今日この日までピアノを続けて来るに至っています。




きっと、この自分自身への、ぐるぐるぐるぐるした問いは、
ピアノを弾き続けて行く限り、これからずっと続くかもしれない。


けれども、

昔好きだった曲の歌詞にあったように、

「迷い探し続ける日々が答えになること」を信じて、

ラフマニノフの曲でいう「光のポイント」に到着できる日を信じて、

一歩ずつでも頑張っていけたら、と思います。



すみません、結論があるようなないような、とりとめのない独り言でした。
by sayaka-blmusic | 2010-01-27 09:30 | ひとりごと

今日発売のムジカノーヴァ2月号に

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今日(1月20日)日本で発売の音楽雑誌、ムジカノーヴァ2月号に、

本番に向けてのメンタルトレーニング「緊張を克服するには」
〜英国王立音楽院のワークショップに学ぶ、ネガティブな心との向き合い方〜

というタイトルで寄稿させて頂いています。

ロイヤルアカデミーオブミュージックに在学中に受講していた「音楽家のためのメンタルトレーニング」の授業のレポートや、私自身がコンサート前などに実践している緊張克服方法などを書かせて頂いています。

原稿を書きながら、ああ、これイラスト入りだと分かりやすいなぁ〜、イラスト入れたいなぁ〜と思ったのですが、私の破滅的な絵の才能では到底無理なので、代わりに、独特の天才的イラストセンスを持つ妹のあすかに、飛び入り協力(!)してもらっています。

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ピアノ演奏はともかく、紙面上での姉妹コラボは初めてです(笑)ゴリラやサル、ついでに私の似顔絵まで(!)ありますので、こちらも必見です。なぜゆえにメンタルトレーニングの記事にゴリラやサルが登場するのかについては、記事をお楽しみに〜。

アカデミーを卒業してから3年以上たちましたが、あの授業は、今思い出してみても本当に興味深いワークショップだったので、今回このような形で、多くの方とシェアできる機会を与えて頂いたこと、本当に嬉しいです。


ちなみに!

この2月号は、全くの別企画でも、妹のあすかが寄稿させて頂いています。

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あすかの方は、「チェルニー30番の遊び方・後編」。
あすか自作のぬいぐるみファミリー「うどん」やその仲間達の写真満載の、楽しい記事です。

偶然にもこうやって全く同じ雑誌の同じ号に、姉妹同時で別のコーナーで書かせて頂いたことは、今までなかったので、私たちにとって、とても貴重な一冊になりました(^-^)


ということで、
もし日本の本屋さんや楽器店などでムジカノーヴァの今月号を見かけたら、是非手にとってみて頂けたら嬉しいです!
by sayaka-blmusic | 2010-01-21 07:12 | その他ピアノ関連

新年!雪人間作成記

ロンドンは、年明け早々またもや大雪。

1月5日にUK全土で大雪が降ったのですが、降った当日と翌日は、殆どの学校は閉鎖、地下鉄ダイヤも乱れ、私の地域はゴミ収集も無し。公共サービス大打撃です。そんな中、普段は評判の悪いロイヤルメール(郵便サービス)だけは、なぜかむしろ絶好調で、普段より郵便が迅速にスムーズに届きます。やっぱり謎です、ロンドン。

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上の写真は家の前の通り。車も道も雪に埋もれてしまっています。これが日本だったら大したことない雪ですが、通常雪の積もりにくいロンドンにとっては大雪。

外の気温も、日中もほぼ常に0度前後かマイナス。なんでも、約30年振りの大寒波だそうです。

こんな中でも、八百屋さんは軒先に果物や野菜を並べています。にんじんを2本買おうとしたら、拍子木の如くカチカチ音がする位かっきんこっきん。店のおじさんに「これ完全に凍っちゃってるんですけど大丈夫ですかね…」と聞くと、「ははは!大丈夫!今やイギリス中の果物と野菜が凍ってるよ!」と、おじさん。

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今回大雪が降って初めての週末の朝、久しぶりの晴天。
こんもり積もった雪と、さんさんと降り注ぐ太陽を見ていたら、なんだか居てもたっていられなくなり、

「そうだ雪だるまを作ろう!!」

と思い立った私。

家の前に可愛い雪だるまがあったら、レッスンに来た小さい生徒さん達も喜ぶし!

東京の中では雪国地域(?)に入る、八王子の山奥で育ったせいか、いまだに、雪を見ると雪だるまやかまくらをどうしても作りたい衝動にかられてしまいます。


で、せっかくなので、欧米式の3段雪だるまを作ろうと決心。

欧米の雪だるまが3段なのは、一段目は頭、二段目は胴体、三段目は足だからなんだそうです。日本の雪だるまは基本が「だるま」なのに対して、欧米の雪だるまはスノー"マン"なので、あくまでもヒトなのです。

3段式の雪だるまって、どんな感じだっけ…と思って、ネットで写真を探していると、ネット上の記事で、「完璧な雪だるまの作り方」を発見!

なんでも、アメリカのブルーフィールド大学工学部の研究室が、長年かかって開発(?)したのだそう。いやーー世の中色々な研究をする方がいるものです。

日本語の記事 http://www.tv-asahi.co.jp/ss/60/news/top.html
英語の記事 http://216.116.225.82/stories/2003/03/03/biz_367750.shtml


これによると、「完璧な雪だるま」は、球体の直径が、足90センチ、胴体60センチ、頭30センチ。胴体部分の上から3分の1のところに長さ75センチの棒を刺して手を作り、古い手袋を着させる。そして石などで目や口を作り、そして 新鮮なにんじんを用意して鼻を作る。「ニンジンは雪だるまにとって、不可欠な物なので注意する」なのだそうです。

おおおお、要は、足:胴体:頭が、3:2:1の割合で、この通りに作れば「完璧な雪だるま」ができるのね!! ちょうど昨日買った凍ったニンジンも余ってるし。

ということで、このレシピ(?)を参考に、夫も巻き込んで早速雪だるま作成開始!

しかし、イギリスの雪は、湿気が少ないせいかサラサラすぎて、全く固まらない。日本でやるような、小さな玉を雪の上で転がしながらゴロゴロ大きな玉を作っていく…というのが全くできない!

あれこれ試行錯誤した結果、家の中からケトルでお水を持って来て、時々水を振りかけて湿らせながら作ったら、なんとか少しずつ固まってきたものの、巨大な玉を作るのはやはりこの方法では難しいので、予定より少し小型サイズの雪だるまを作ることに。



その結果、完成したのが、こちら!


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かわいくない…。


全然かわいくない…。なぜだ…。



夫に言わせると、私の
「全く美的センスのない」目と鼻の配置その他が原因らしいのですが、私はそれよりも、彼が勝手に付けた意味不明のツノが原因な気が。雪だるまにツノなんてあったっけ…。

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せっかくなので一緒に記念撮影。私との大きさ比を見ても分かる通り、「完璧なスノーマン」よりもかなり小さめのスノーマンになってしまいました…。


とはいっても自分の作ったものは愛着が沸くもので、1晩たった今朝も、つい無事が気になって様子を見に行ってしまいました。今のところ目も鼻も無事! 今日からまたしばらく雪が降るそうなので、映画のスノーマンみたいに急に溶けちゃうことはしばらくなさそうです。


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ということで、大変遅くなってしまいましたが、明けましておめでとうございます!
更新頻度にバラツキのあるブログですが、今年もマイペースでゆっくりブログを続けていこうと思っていますので、どうか宜しくお願い致します。

今年は久しぶりに、3月6日(土)にロンドンのピカデリーサーカスでコンサートを予定しています。ラフマニノフのソナタ第2番ほか、自分自身のオリジナル曲も初公開予定です。こちらのサイトから既に予約受付も開始していますが、詳細はまたこのブログでもアップさせて頂きます!

それでは、2010年が、今この文章を読んで下さっている方お一人お一人にとって、幸せいっぱいの温かい1年になりますように、心からお祈りしています!
by sayaka-blmusic | 2010-01-10 18:03 | ロンドンでの日常生活