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ラフマニノフの巨匠、ハワードシェリー先生のレッスン再び


以前、このブログで、ラフマニノフの巨匠、ハワードシェリー先生との出会いのエピソードを書かせて頂きましたが、あれから半年の月日がたち、今回久しぶりに再びレッスンをして頂くことができました。

前の日記にも書いた通り、ハワードシェリー先生は、世界でただ一人ラフマニノフの全てのレパートリー(ピアノソロ曲、コンチェルト、室内楽曲全て含む)を全曲完全録音をしたという、ラフマニノフの巨匠! ずーーっと前から彼のレッスンを受けることは夢だったのですが、様々なハプニングを経て、半年前のブリストル大聖堂でのコンサートの前に、ようやくその夢が叶い、初めてレッスンを受けることができました。(その時の日記はこちら。その1その2その3

その際に、もしまたレッスンが必要になったらいつでも言ってねと仰って下さっていたのですが、実際その後先生は、指揮者としての世界ツアーで各国を飛び回っていたこともあり、なかなかチャンスがありませんでした。

ですが、この3月にラフマニノフのソナタを演奏するリサイタルを予定しているとお伝えすると、世界ツアーから戻ってくる2月に、2回レッスンをして下さると前々から約束して下さっていました。

そして先週の水曜、そして今週の木曜(昨日)と、2回続けてそのレッスンが実現!

今回のコンサートで私自身初挑戦のラフマニノフのソナタ第2番を携えて、
半年振りにドキドキしながら先生の家へ。

世界ツアーから帰ったばかりでお疲れのところ、またもや本当に親切に出迎えて下さり、半年前のレッスンのことやその時お渡ししたアレンジの楽譜のことをはじめ、私の夫の仕事のことなどまでしっかり覚えていて下さり、感激!



そしてレッスン本編開始。

半年前に初めて、彼のレッスンを受けた時は、先生のレッスンを受けているという感動自体があまりにも大きくて、冷静になっている余裕はなかったのだけど、今回レッスンの途中に、ふと先生の姿と、後ろに飾ってあるラフマニノフの写真が重なった時に、

もしかして先生、ラフマニノフ本人に似ているんじゃないかな…、

と思いました。
  
ラフマニノフ並に大きな手。そしてその大きな手で一番大事にしているのは、何よりも和声(ハーモニー)の繊細な移り変わり。

ハワードシェリー先生のアプローチは、兎にも角にも、まずハーモニーの移り変わりを完璧に理解し、そこからメロディーの歌い方もフレーズの作り方も逆算的に割り出して行くアプローチ。

恐ろしく緻密に、そして複雑にハーモニーを展開させていくラフマニノフの作曲方法と全く同じアプローチです。

もちろん姿も性格も(ラフマニノフはハワード先生みたいにフレンドリーではなく物凄く気難しかったらしい)全く違うけれども、きっと根本的な音楽との向き合い方が一緒で、だからこそ先生は、ラフマニノフの音楽が分かってしまうんだろうな、そして、だからこそ誰も成し遂げられなかった全曲録音の偉業を達成されたのだろうな、と思いました。

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超一流の音楽家の放つエネルギーとオーラは、やはり並大抵ではなくて、こうやって間近で1対1でレッスンを受けていると、ふとこちらが気を抜くと気絶してしまうんじゃないかという位の強いエネルギーの波動を感じます。

よく一流の演奏家が必ずしも一流の先生ではないというけれども、彼の教え方は指導者としても本当に素晴らしい。私に最も足りない点を、本当に的確に分かり易く指摘して下さる。

限られた時間で、できるだけのことを教えようとして下さっているのが物凄く伝わってきて、精一杯それに答えようとするのだけど、
 
自分に出来る限りのエネルギーをなんとか出し切っても出し切っても、まだまだ彼の要求しているところには届かない。

だめだ…、もうエネルギー切れかも…。 

情けないのだけど一瞬本当に体力と集中力が持たないかと思いました。

でも、この先、またいつこんな機会があるか分からない。
吸収できることは隅から隅まで吸収したい!
と思って、ここ数ヶ月、一度も使っていなかった体内エネルギー貯蓄庫からも緊急総動員!

すると、エンドルフィンだかアドレナリンだかが大放出されたのか、
レッスンの後半は、もはや半分トランス状態になっていて、

ああ、このままずっとここでこうやってレッスン受けていたい…、と心から思っていました。


世界で一番好きなラフマニノフの音楽。

そして、そのラフマニノフの音楽を、
恐らく世界で一番ラフマニノフと向き合ってきた先生から、
直接伝授して頂いている…。

私にとってこんな幸せな時間はありませんでした。



そして無事レッスン終了。

最後のレッスン(昨日)は、1時間の予定のところ、ぶっ続けでなんと約3時間も見て下さり、終わる頃には、意識喪失寸前でふらふらふらふら…。

でも、こんなに幸せな疲れは久しぶりでした。音楽と本当に真剣に向き合うって、本来これだけのエネルギーが必要なものなんだ、と気づかされた思いでした。

終わった後は、素敵な奥様までご紹介して下さり(奥様もピアニスト)、写真を撮って頂いたり、色々お話させて頂きました。


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そういえば以前、日本に完全帰国するかイギリスに戻るか夫と話し合っていた時に、

「さやかはイギリスに残る場合に、一番したいことは何?」

と聞かれた時に、真っ先に答えたのが

「ハワードシェリー先生に、ラフマニノフのレッスンを受けたい!」

ということでした。

その時は、まだ具体的にレッスンを受けることが決まっていた訳でもなく、
雲をつかむような夢のような話でした。

あの時、アカデミー玄関で、タクシーに乗り込む先生を捕まえて、勇気を出して思いきってレッスンをお願いしたのがきっかけで始まった一連のレッスン。

こうやって、まさか本当に何回もレッスンを受けさせて頂けるようになるなんて、本当に夢みたいだけれども、

でも、レッスンを受ける夢が叶ったー!とこれで終わりにしては
決していけないんだと思う。


次のステップは、

先生があれだけのエネルギーで、惜しみなく教えて下さった様々なエッセンスを、
しっかり自分のものに吸収して、
本番で、自分のラフマニノフとして表現しきること。


今までラフマニノフのソナタを知らなかった方や、
聴いたことあるけどよくわからん曲、という印象を持っている方々のうちの、
たった一人でも、
何て素敵な曲なんだろう!と思って頂けるような演奏ができたら、
こんな嬉しいことはないです。

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P.S
3月6日のピカデリーサーカスでのコンサート、是非一人でも多くの方にいらして頂けたら、本当に嬉しいです。コンサートのチケットは、今週の水曜日までウェブサイト上での前売りチケット予約受付中です。それ以降は、基本的に当日券での扱いとなります。
詳細はこちら http://www.borderlessmusic.com/ticket
by sayaka-blmusic | 2010-02-20 08:17 | ラフマニノフについて

<完結編> ラフマニノフの巨匠・ハワード・シェリーとの感動の出会い!


パート1><パート2>の続きです。

ということで色々なハプニングを経て、2年半近くの時を経てようやく本当に受けられることになった、ハワードシェリー先生のレッスン当日。 

世界でただ一人ラフマニノフの全曲録音を成し遂げた、ラフマニノフの巨匠にレッスンを受けることができるというのは本当に夢のようで、バスに乗りながら未だに信じられない気持ちになっていました。

レッスン場所はロンドン内にある先生のご自宅。

もう二度とないかもしれないこの貴重な機会、今日一日で学べることを、目も耳も全身使って精一杯吸収しよう!

そう思いながら、インターフォンを押すと、2年半ぶりにお目にかかるハワードシェリー先生が笑顔で出迎えて下さいました。

緊張しながらご挨拶し、案内されたのは、一体何部屋あるんだろうという位、広い広い家の最上階の部屋。

そこには・・

2台のフルコンサートグランドピアノ(大ホールと同じサイズの特大グランドピアノ)が!!!!しかも一台はスタンウェイ。

レッスン室に2台のピアノを置いている先生は多いですが、2台ともフルコンというのは初めてお目にかかりました・・。(すごい!毎日フルコンで練習しているのね・・)思った矢先に、先生、 「最近、指揮の方の世界ツアーで忙しくて殆どロンドンの自宅に戻っていないんだよね・・」とのこと。 ひえええ、本当にお忙しい中、時間を割いて下さったのだなぁ・・と本当に恐縮、そして大感謝です・・。

ふと壁を見渡すと、ラフマニノフの肖像画や写真が何枚も飾ってありました。

緊張しきっている私を気遣ってくれてか、ハワードシェリー先生、まずは私の家族のことやロンドンでの生活のこと、今度のコンサートのことなど、色々尋ねてきてくれました。今度のブリストルのコンサートのことを尋ねられた時に、チラシを参考までにお見せすると、先生

「あ!!このコンサートってブリストルの年に一回のイベントだよね? 昨年僕の息子が指揮したコンサートだ!」

「えええーー!!」

そう、このHigh Sheriff Gala Concertは、ブリストルの執政長官であるHigh Sherrifを記念するコンサートで、年に一回6月に開かれます。

私達は今回の2009年度のゲストとしては呼んで頂いていて、今回の指揮者は、Peter Stark氏ですが、昨年度の指揮者はなんと彼の息子さんのアンドリュー・シェリー氏だったそうです。(家に帰ってウェブを見てみると確かに2008年度Gala Concertの指揮者はAlexander Shelleyとなっていました!)  つまり、私達の出演が一年ずれていたら、彼の息子さんと協演していたかもしれないということでした。

何とも不思議な偶然に、私の緊張も少し解けて場が和んだところで、レッスン開始。

曲は、前述のブリストルのコンサートでオーケストラと協演予定の、ラフマニノフ2番のコンチェルトの3楽章。 

先生自らが、もう一台のフルコンで伴奏パートを弾いて下さいました。

レッスンを進めながら、ラフマニノフならではのメロディの歌い方、和声の緊張感の持っていき方、更に彼自身がいつもコンサートの時に使っているという秘伝の指使い方法まで、本当に熱心に教えて下さり、1時間のレッスン予定のところ、実に2時間以上も、本当に濃いレッスンをして下さいました。

あと、彼自身、ソリストとしてはもちろん、指揮者としてもこの曲を何度も指揮したことがあるとのことで、「オーケストラはこの部分で少し間が必要だから」などなど、指揮者の立場からのアドバイスも。

何もかもが、深く深く納得することばかりで、今後ラフマニノフの他の曲を弾く時にも全部応用できる貴重なアドバイス。 

全部をその場で吸収してその場で直すことはもちろん難しかったけれど、少なくとも彼が伝えようとしてくれたコンセプトは、心の底から分かった気がします。もちろん、今の自分で本当に理解できていた範囲は限られていたかもしれないけれど・・。

あと彼自身の演奏を目の当たりにし、そのエネルギーを感じることで、ラフマニノフの曲を演奏する時に、どれだけ本当の深いエネルギーが必要なのかも身体で感じました。



レッスンが終わって、先生にお渡しできたらと思って用意してきたものを恐る恐る差し出す。

「あの・・これ、私がピアノソロ用にアレンジしたラフマニノフのシンフォニー2番なんですが、もし楽譜をもらって頂けたら嬉しいです」

去年、ミュッセから出版させて頂いた「ラフマニノフ交響曲第2番3楽章」のピアノソロアレンジの楽譜

すると、先生、

「シンフォニーの2番の3楽章?! 実は僕、ラフマニノフの曲の中で一番好きな曲なんだ、是非、今この場で弾いてみて!」

と言って下さり、突然の展開に戸惑いながらも弾かせて頂くと、

「僕自身この曲をオーケストラで何度も指揮したことがあるけれど、このアレンジは本当に気に入った、良くできている!」

と言って下さり、それだけでも涙が出るほど嬉しいのに、更に

「僕も弾いてみる!」

と自らピアノに向かって、私のアレンジ譜を先生自ら初見演奏!

そして更に更に嬉しいことに、一度弾き終わった後、
「とても気に入ったからもう一回弾きたい!」と、もう一度はじめから最後まで繰り返して弾いて下さったのです・・・。

ラフマニノフをピアノ曲も声楽曲も交響曲も、全て知り尽くした彼による「交響曲2番3楽章ピアノソロバージョン」の演奏は、やさしさと、あたたかさと、なつかしさと、深さに満ちていました。

更に各パートの弾き分けのバランスが絶妙。本当にオーケストラに聴こえてきて、彼が弾いてくれていることの感動も相まって、本当に涙が出そうになってしまいました。

その後、ラフマニノフの全曲録音をしていた時のエピソードをお話下さったり、ラフマニノフの育ったロシアの地を訪れた時の写真を見せてもらったり、いくつもあるラフマニノフの肖像画を一つずつ解説して頂いたり・・と、夢のようなひと時でした。


終わった後、 玄関の外まで見送って下さり、温かい笑顔で手を振るハワードシェリー先生にご挨拶しながら、

2年半前のあの時、
ロイヤルアカデミーの玄関で、タクシーの窓越しに、思い切って先生にをかけさせて頂いた時のことをふと思い出しました。

めちゃくちゃ恥ずかしかったけど、あの時、勇気を振り絞って彼に声をかけて、本当に本当に良かった・・・

あの後、スパムメールや電話のタイミングなどで何度もすれ違いになってしまったけれど、もし最初にサクっと実現してしまっていたら、ブリストルのコンサートつながりの嬉しい偶然も発見できていなかったし、今回のアレンジ楽譜も渡せなかったし(出版は昨年秋だったので)、こんな風に色々話をすることもなかったかもしれない。

全てのことには、きっと最善のタイミングがあるんだな・・・と改めて感じました。




最近、イギリスには珍しい位の晴天が続いています。
今日はいよいよあすかがロンドンに到着する予定です。

今回のブリストルのコンサートも、色々な偶然や出会いが重なり合い、ブリストル財団はじめ沢山の方々のご協力などがあって初めて実現することになったコンサート。
精一杯感謝の気持ちをこめて、あと1週間半、用意にのぞみたいと思っています。
by sayaka-blmusic | 2009-06-04 16:50 | ラフマニノフについて

<Part 2>ラフマニノフの巨匠ハワードシェリーとの感動の出会い!

パート1の続きです。

2008年2月、特別講座を終えたばかりのラフマニノフの巨匠、ハワードシェリー先生を探して、学校中うろうろしていると、学校のエントランスの外に彼の姿が。しかも今まさにタクシーに乗り込もうとしているところ!

猛ダッシュでかけより(怖すぎ)、息切れしながらタクシーの窓越しに

「お急ぎのところゴメンナサイ! あ、あなたに教わりたいのですが、定期的なレッスンはされていますか??」

と聞くと、(今考えてみるとかなり唐突すぎ・・・) 

「残念ながら、ツアーなどで忙しくて定期的なレッスンはしていないのだけど、単発的にだったら可能かもしれない。さっき講座で最後に弾いていた子に僕のメールアドレスを伝えてあるから、彼女からメールアドレスを聞いて、そこに連絡をしてね。」

「は、はい!ありがとうございます~~ (ToT)」

で、今度は必死でさっき最後に演奏していたというウズベキスタン人の子を校内で探し、事情を話してメールアドレスを聞く。

その日、家に帰って一息ついたところで、さっそくメールを書きました。

今日のマスタークラス、先生の教え方も演奏も、本当に感動したということ。
ラフマニノフの曲の全曲録音を成し遂げたという偉業に、心から敬意を感じるということ。
自分自身もラフマニノフを心から愛していて、ラフマニノフ弾きになりたいと思っていること。
いつか、もしチャンスがあれば、是非あなたからラフマニノフの曲をレッスンしてもらいたいと思っているということ。

何度も読み返したあと、
送信ボタンをクリック。


しかし待てど暮らせど返事は来ず・・・・。


それから丸1年ほどたった2008年2月のある日、ふと何気なくメールフォルダを整理していると、半年位前のスパムメールフォルダの中に「ハワード・シェリー」の名が!

!!!!!!

慌てて開いてみると、1年前に私が送ったメールに対してのとても丁寧なお返事が書かれていました。送信日時は約半年前。それによると、彼はスパムメールフォルダから偶然私のメールを見つけ、とても返事が遅れてしまったことをお詫びして下さっていました。 

そう、つまり私が最初に送ったメールが彼のスパムメールフォルダに入ってしまい、彼が半年後にスパムメールの中から発見し返事を書いてくれたメールが、今度はどういうわけか私のスパムメールフォルダに入ってしまい、更に半年後に私が発見したといういきさつでした。 おそるべしスパムフィルタの2重妨害!!

で、すぐにお返事を書いて、今度はスパムに引っかからないように2つのメルアドから送信すると、今度はフィルタにかからなかったらしく、すぐにお返事を下さいました。ただ、残念なことにもうすぐ彼は長期の世界ツアーに出発してしまうところで、次にロンドンに戻ってくるのは4ヵ月後の6月になってしまうということ。6月になったらレッスンを見てあげられると思うので、ロンドンに戻ったら私あてに連絡するね、とメールに書いて下さっていました。


と、その後、4ヶ月の間にあれやこれやと事情が変わり、私自身2008年6月~11月の長期一時帰国が決まりました。その旨、ハワード先生にも一応メールでお伝えしたのですが、6月に入ってもハワード先生からの連絡が無かったため、もはや完全に諦めモードに。そして引越し荷物の最終片付けをしていた一時帰国出発前日の2008年6月25日午後14時ごろ。

あと数時間後位に、携帯の解約手続きのための連絡をしなきゃ・・と思っていた矢先に、携帯の着信音が鳴りました。

トゥルルルルーーー。 

非通知設定のプライベート番号。 
誰だろう・・と思いながら電話を取ると・・



「ハワードシェリーです。 今ちょうどロンドンに戻ってきたよ。6月にレッスンの約束だったよね。
もうすぐ日本に帰ってしまうというメールを今見て慌ててかけたのだけど、まだロンドンにいたんだね!よかった!」


ええええーーーーー!!!!


その時の私の驚きと喜びとパニックったらありません。

そう、6月に世界ツアーから戻ってきたら連絡する、という約束を、彼は本当に覚えていてくれたのでした・・・。しかもその数時間後に、私は携帯の契約を切ってしまうところだったので、まさに奇跡のギリギリセーフのタイミング。



興奮を抑えながら、

「あの、私実は明日の朝の便で日本に帰国してしまうんです・・。でも、11月にまたロンドンに戻ってくる予定なので、その後、是非是非ラフマニノフのレッスンをお願いできたら嬉しいです!」

すると先生、

「ぎりぎり帰国前に話せて本当に良かった! じゃあ君がロンドンに戻ってきたら君のラフマニノフを聞くのを楽しみにしているよ!」

と言って下さいました。

翌日、私は予定通り日本への一時帰国へ出発。



そして、4ヶ月の日本一時帰国後、再度ロンドンに帰って来た後、ブリストル大聖堂でのコンサートの演目の一つがラフマニノフのコンチェルトと正式に決まった為、この曲で是非ハワードシェリー先生のレッスンを受けようと決断しご連絡! 今度は、スパムメールに入ることもなく、また世界ツアー(指揮者としての)から先生がちょうどロンドンに戻っているタイミングと丁度ぴったり合うことができ、とうとうレッスンを受けることが決定しました。

今度こそ本当に会える! 
ラフマニノフの巨匠、ハワード・シェリー先生にレッスンを受けられる!

前日は興奮と緊張でなかなか寝付けないほどでした。

そして迎えた先週末のレッスン当日。


Part 3>へ続く
by sayaka-blmusic | 2009-06-03 20:59 | ラフマニノフについて

<Part 1> ラフマニノフの巨匠ハワードシェリーとの感動の出会い!


先週末、長い間の夢が、ひとつ、叶いました。

それは、世界でただ一人、ラフマニノフの曲を、ピアノ曲、室内楽、声楽曲含め、全曲レコーディングし、ロンドンでラフマニノフ全曲演奏会シリーズを成し遂げた、ラフマニノフの巨匠、「ハワード・シェリー氏(Howard Shelley)」に、ラフマニノフの曲をレッスンしてもらうということ。


実はこの日に至るまで、長い長――――-―――― い経緯があったのです。



今回の日記は写真無しです、しかも長いです (長すぎるので分割します)、が、
私の勝手な興奮に付き合って下さる方がいらっしゃったら、読んで頂けたら嬉しいです。


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全ての始まりは2007年2月。

卒業後ふらーっと訪れた母校ロイヤルアカデミーのピアノ科掲示板を見てみると、次週のマスタークラス(公開レッスン講座)の特別ゲスト講師の欄に「ハワード・シェリー」の名が!!

ハワード・シェリーといえば、上にも書いた通り、世界でただ一人ラフマニノフの全曲録音を成し遂げた、ギネス認定並みのラフマニノフの巨匠。 現在はピアニストとしてだけでなく、指揮者としても世界中をツアーで飛び回っているので、その彼がアカデミーに特別ゲストとして来て、指導風景を目にできることなんて本当に貴重な機会。

もちろん私も彼のラフマニノフのCDを持っていたし、ラフマニノフに対する敬意や全曲演奏を成し遂げたことから来る、演奏の説得力や構築力、重さのようなものを、本当に尊敬していました。

私はこの時既にロイヤルアカデミーを卒業してしまっていたので、当然その特別クラスの受講生になることもできず、聴講も通常は無理なのですが、どうしても彼の公開講座は聴講したい!と、在学中の恩師エルトン先生に頼み込んでみました。

在学中の、私の異様なまでのラフマニノフへの固執を嫌というほど知っている(何せ試験も校内外の演奏会も殆ど全てひたすらラフマニノフの曲を選んでたので・・・) エルトン先生は、二つ返事でOKしてくれて、ハワード先生のマスタークラスの聴講にもぐりこめることに。



その日「ハワード・シェリー特別公開レッスン」をモデル生徒として受講していた現役アカデミー生たちが弾いていたのは、モーツァルト、ラフマニノフパガニーニラプソディ、ラフマニノフ2番コンチェルト。 モーツァルトの指導ももちろん素晴らしかったのですが、やっぱり俄然素晴らしかったのはラフマニノフの指導。構成的にも和声的にも曲のバックグラウンドからも全ての面から裏づけのあり、しかも分かりやすい指導で、本当に素晴らしかったです。 更に、先生自身が時々見本で弾いてくれる演奏は、(練習していない曲で、しかも超難曲をなんであんな風に弾けるの??)というくらい、完璧を通り越して観客一同みな唖然。 先生が見本で弾く度に、客席から感嘆の声と拍手が起きるほど。


公開講座が終わり、興奮冷めやらぬまま、ひとりで地下のCanteen(学生食堂)へ。

学食のテーブルに座り、紙パックジュースを吸いながら、
ふと無謀な夢が私の中でむくむくと湧き上がってきました。


うーーーん、どうしてもこの先生に、ラフマニノフの個人レッスンを受けてみたい!



でも、いまや彼の本職は、ピアニストでもピアノ教師でもなく、世界的な指揮者。

プライベートでレッスン受けるなんて、やっぱり無理だよな・・、絶対無理だよな・・。


夢は一瞬でしゅわわーっと消えそうになったのですが、
次の瞬間、もう一人の自分が待ったをかけてきました。



尋ねてみるだけなら、何も失うものはないんじゃない?



そうだよな・・・今日を逃したらもう一生会えないかもしれない。
うん、これが唯一のチャンスかも!
講座が終わって30分・・、今ならまだアカデミーにいるかもしれない!

学食のテーブルを立って、走り出した私。


Part 2 に続く・・・
by sayaka-blmusic | 2009-06-03 18:12 | ラフマニノフについて

ラフマニアック・アフタヌーンとチャーチコンサートとウェイクボード

先週末は、土曜日、日曜日と2日間リサイタルでした。
台風が心配だったのですが、ギリギリ金曜の夜のうちに過ぎ去って、
土曜日は朝から青空の広がっていてホッとしました。

まず、9月20日(土)はオールラフマニノフプログラムでのサロンコンサートでした。

その名も、
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松本さやかコンサート 「Rachmaniac Afternoon (ラフマニアック・アフタヌーン)」

ラフマニノフ好きの音楽愛好家の方達が企画して下さったサロンコンサートです。
お客様の中には、ご自身もセミプロまたはプロで活動されているピアニストの方々も多くいらっしゃって、予め主催者の方がお客様一人ひとりにアンケートして下さった「私の好きなラフマニノフの曲トップ10」は、集計しようがないほど各自マニアックな結果になっていて(笑)驚きました。

ということで、皆様かなーりの筋金入りのラフマニノフマニアの方々だったので、
曲目もトーク内容も、遠慮なく思う存分マニアックに(笑) お客様と一緒にかなり濃いラフマニノフの午後を過ごしました。

コンサートのあとは、「らふまんま」と称して、
主催者の方々が、私の大ーーーーー好物を組み合わせたお食事でパーティを用意して下さいました。白ワイン、魚介類、餃子、などなどなど・・。

演奏の直後の、白ワインと餃子(合うか合わないかはどうでもいいんです)、
あーー幸せ・・・(ToT)

主催者の方々、いらして頂いた皆様本当に有難うございました。


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そして翌日の9月21日(日)は、亀有にある教会でのチャーチコンサート
「松本さやかリサイタル ピアノ記念コンサート」

ロンドンのチャーチでは沢山のコンサートをしてきたけれど、
日本の教会でのチャーチコンサートは本当に久しぶりです。

イギリスでも日本でも共通して思うのは、
チャーチや大聖堂などでのコンサートは、
温かくて、神聖で、それでいてとってもポジティブな空気が、
高い天井の一番上の方まで、会場いっぱいに広がっているということ。
演奏していても、不思議なほど澄んだ真っ直ぐな気持ちになれます。

プログラムは昨日とはうって変わって、
ドビュッシーやリスト、アメージンググレースのあすかバージョン、などなども含んだプログラム。とはいってもやはりプログラムの約3分の1はラフマニノフの曲が占めてしまいましたが・・・^^;

後半では、あすかも特別ゲストに加わってくれて、
連弾や鍵盤ハーモニカの演奏も。

温かいお客様に囲まれて、本当に楽しい時間を過ごすことができました。


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考えてみたら、全く違うプログラムでのフルリサイタルを2日連続というのは、初めての経験。
フルマラソンを2日連続で走るようなものなので、体力や気力が持つかどうか正直不安だったのですが、不思議なことに、エネルギーを消耗するというよりも、
お客様から頂けるパワーで、むしろどんどん元気になれた気がします。



ひとつひとつの与えて頂いた演奏の機会を心から感謝して、
10月のコンサートも頑張りたいと思います。

(10月の東京でのコンサートの予定はこちらです)


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<おまけ>

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お疲れ様デーとして、火曜日の休日に浜名湖でウェイクボード(モーターボートに引っ張られて滑る、水上スキー+サーフィンみたいなものです)の初体験をしたものの、コツが上手く掴めなくて何度トライしてもすぐに沈んでしまい、

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代わりにチューブに乗ってモーターボートで引っ張ってもらったら、これはこれで怖すぎて失神寸前。髪振り乱しながら叫び声上げてるところです。
ジェットコースターより怖かった・・・・・。
by sayaka-blmusic | 2008-09-25 20:27 | ラフマニノフについて

ラフマニノフ交響曲2番3楽章 ピアノソロバージョン楽譜誕生!

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前に何度となく日記でも書いてきた
私の大好きなラフマニノフ交響曲 第2番。

コンチェルト(協奏曲)第2番の方ばかり有名で、
なかなか交響曲の方は知られていないのが現状・・・。

こんなに素敵で、泣けるメロディ、
何とかもっと沢山の人に聴いて頂けないものか・・・。

と考えた挙句、

それなら、自分でピアノソロバージョンに編曲してしまおう!と思い立ったのがきっかけ。


この曲の「簡単アレンジバージョン」などは、
今まででも幾つか、ヨーロッパの出版社等から出版されているのですが、
難しくても原曲になるべく近い編曲バージョンというのは、今までありませんでした。

ラフマニノフ自身、色々な作曲家の曲を、
ピアノソロ用にアレンジしたりしていた作曲家だったので、
彼の死後60年経った今、私のような一ラフマニノフファンが、
勝手にピアノ用にアレンジしても、
きっと彼は怒らないはず・・いやきっと喜んでくれるはず!!

そして完成に至るまでの色々ないきさつはこちら・・・↓

(この曲を、ロンドンのオーケストラで聴いて号泣した時の日記)

(この曲を編曲中、苦心している頃の日記)



やっと完成した後、いくつかのコンサートで演奏したものの、
楽譜自体は手書きの楽譜のままでずっと放置していたのですが、
この度、楽譜販売サービス「ミュッセ」から出版させて頂けることになり、
正式な楽譜として日の目を見ました!!!ばんざーい。


<楽譜内容>
ラフマニノフ 交響曲第2番 第3楽章 ピアノソロ用編曲(ショートバージョン)
作曲 セルゲイ・ラフマニノフ
編曲 松本さやか
価格 525円

こちらから購入できます。↓
ミュッセの販売ページへ


原曲は11分くらいですが、4,5分で演奏できるショートバージョンになっています。
オーケストラの各パートを、出来る限り原曲に忠実に、10本の指に無理やり詰め込んでいる為、楽譜の見た目よりも、かなーーーり弾き難いですが、是非色々な方に弾いてみて頂いて、この曲の素晴らしさをピアノでも実感して頂けたら嬉しいです。


ラフマニノフの交響曲を、オーケストラのスコアとにらめっこしながら編曲作業をしていると、彼のソロ曲を弾いているだけでは分からなかった、色々なメッセージが伝わってきます。


ゆくゆくはラフマニノフシンフォニー全曲のピアノソロバージョン(一体どれだけの年月がかかるか不明ですが・・)や、自分のコンサートでは頻繁に演奏しているコンチェルト第2番の方のソロバージョン、パガニーニラプソディのピアノソロバージョンなども、楽譜化したいと思っています。
by sayaka-blmusic | 2008-09-19 18:41 | ラフマニノフについて

ラフマニノフリサイタル無事終わりました + コンサート裏話

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昨日、無事ピカデリーサーカスでのラフマニノフリサイタル「Preludes +」が終わりました。

お天気にも恵まれ、数日前にはあられが降っていたのが嘘のような暖かさで、
春を通り越して一気に初夏の陽気でした。

お陰様で沢山の方々にいらして頂き、ここロンドンでお世話になった方々やそのお知り合いの方々、ブログを読んで駆け付けて下さった方、また、ピカデリーサーカス駅近くという場所柄、通りがかりの沢山の方々にもいらして頂き、本当に嬉しかったです。

この3年間、ロンドンで経験してきたこと、感じたこと、出会ってきた方々、
色んなことを思い起こして、弾いている間も胸がいっぱいになっていました。

チャーチのステンドグラスから降り注ぐ日だまりの中での、
温かな時間と、ラフマニノフの音楽を、皆様と共有できたこと、本当に嬉しく思います。

当日の演奏曲目は以下の通りでした。

松本さやか ラフマニノフリサイタル 「Preludes +」

・ラフマニノフ プレリュード Op.3-2 (Bells in Moscow)
・ラフマニノフ プレリュード Op.23-6
・ラフマニノフ プレリュード Op.23-5

・ラフマニノフ Lilacs(リラの花)
・ラフマニノフ Daisies(ひなぎく)
・ラフマニノフ 交響曲第2番 第3楽章 (piano solo version arranged by Sayaka Matsumoto) (ブログで作成過程を報告していたあの曲です 笑)

・ラフマニノフ プレリュード Op.32-3
・ラフマニノフ プレリュード Op.32-12
・ラフマニノフ プレリュード Op.32-13

・ラフマニノフ 18th Variation from Paganini Rhapsody
(piano solo version arranged by Sayaka Matsumoto)

・ラフマニノフ ピアノコンチェルト 第2番 第1楽章(アンコール)
(piano solo version arranged by Sayaka Matsumoto)



いらして頂いた方々、またコンサートの成功を応援していて下さった方々、本当に有難うございました!!



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<余談>


実は、あのコンサート当日のリハーサル時、ちょっとしたハプニング(?)がありました。

11時からのリハーサルに合わせてチャーチに到着すると、
何故か5、6歳くらいの現地の子供達が、合計30人ほど、教会内部のあちこちでペタンと座り込んで、写生大会をしていました。どうやら地元の小学校のアートの課外授業か何かのよう。

チャーチの管理人の方が、「もう終わるところなんで、子供達のことは気にせずに練習を始めて下さい」とのことだったので、子供達の邪魔にならないように、静かな曲からポロポロとリハーサルをし始めました。


1曲弾き終わると、いつのまにか


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じーーーーーーーっ。

30人くらいの子供達が行儀良くピアノの横にずらーっと体育座りをして、
つぶらな瞳で一斉にこちらを見上げている!!

コンサート主催者のGodfreyさんがニコニコ近付いてきて、

「サヤカ、もし良かったらここにいる子供達のために短いトークコンサートをしてあげてくれないかい?今日弾く曲の中から1曲でいいから。」

との提案。

子供達の前で演奏したり話したりするのって、純粋な感性の前でごまかしが聞かないから一番緊張するんだけど、うううどうしよう・・。しかもラフマニノフの曲なんて、子供達に受け入れてもらえるかしら・・。うー不安。

と思ってる間にも、既に子供達は体育座りで完全に準備OKで

(@ @)(@ @)(@ @)(@ @)(@ @)(@ @)(@ @)(@ @)
じーーーーーーーーーーーーっ

と事の成り行きを至近距離で見ているので、断れるはずもなく、

えーいもうなるようになれーーと

「みなさんこんにちはーーー!」
と子供番組のお姉さんに成りきったつもりで始めました。あー恥ずかしい。

でも、子供達皆ものすごーく元気に反応してくれて、
色々な質問にもまるで競い合うようにどんどん手を挙げてくれました。(この辺りは欧米人の子供達ならではかも・・)。ラフマニノフや曲の簡単な紹介をしたりした後に、ラフマニノフのプレリュードの23―5を演奏したら、ラフマニノフという分かりにくい曲なのにも関わらず、子供達、
曲調の変化に合わせて「Beautiful!」とか「Wow!」とか声を上げながら、興味津々で聞いていてくれました。

終わった後、一斉に色々な質問や感想を言いに駆け寄ってきてくれて、中には片言の日本語で、「アリガトウ!」とか「サヨナラ!」と言ってくれる子までいました。

その小学校の先生方は「思いがけないサプライズプレゼントをありがとう!」と言って下さったけど、私の方こそ、大きなサプライズプレゼントをもらった気がします。

ラフマニノフは子供には分かってもらえないかもしれない、なんて、
奢った考えだったな・・と思う。
1月にロイヤルフェスティバルホールに聴きに行ったロンドンフィルのラフマニノフの交響曲2番の演奏で、6歳位の女の子が、50分の大曲を、身を乗り出してじーーっと聴いていたことを、ふと思い出しました。

「分かる」とか「分かりにくい」とか、そんなことで音楽を分けようとしていた私が、
一番「音楽そのもののチカラ」を分かっていなかったのかもな、と
ふと思い起こされました。


緊張した気持ちを抱えてリハーサルを始めようとしていた矢先の、
予想外の嬉しいハプニングに、
なんだかすっかり、余計なもやもやが吹き飛んで、
まっさらな気持ちで音楽と向き合う、音楽の原点に立ち帰れた気がしました。

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そんなこんなで、ロンドン市内での最後のソロコンサート、無事終了致しました。
今は、次の目標の、ブリストル大聖堂でのあすかとの2台ピアノリサイタル(6月3日)に向けて用意を開始しています。

3年間のイギリス留学生活のラスト1ヵ月半。
悔いの残らないよう走りきることができたらと思っています!
by sayaka-blmusic | 2008-05-09 09:56 | ラフマニノフについて

ラフマニノフ -愛娘の誕生の時に生まれた一曲

5月7日(水)のラフマニノフリサイタルまで、あと1日となりました。

実は私、来月6月末の本帰国が決まったので、私自身の単独ソロコンサートとしては明日のコンサートが、ロンドンで最後のコンサートとなります。(あすかとのデュオコンサートは6月に別に行う予定ですが、ロンドンではなくブリストルで行う予定です)

今回のリサイタルに向けて、悩みに悩んだ末、厳選したラフマニノフの10の小品。それぞれ3分~5分程の短い作品ですが、一曲一曲が本当に珠玉の名曲です。

ちょうど先週木曜日発行分の英国邦人情報誌「ニュースダイジェスト」のインタビューで、「私の好きな¨癒し¨のラフマニノフの曲」というテーマで、今回のコンサートで弾く予定の曲のうちの何曲かについては答えさせて頂いたのですが、そこでは答え切れなかった曲で、私にとってとても思い入れのある一曲について、ご紹介させて頂こうと思います。

明日のコンサートで、2曲目に演奏するプレリュードのOP23-6番。

プレリュード集の中では特に有名という訳ではなく、決して派手な曲でもないのですが、目立たないところにぽつんと咲く一輪の花のように、静かな光を放つ名曲です。


この曲はラフマニノフが、最初の娘イリーナが産まれた時に書いた曲です。

娘の誕生、というと喜びに溢れた曲のはずなのに、私は単なる喜びや優しさだけでない、むしろ目の前に起きている奇跡や幸せを信じられないような、幸せとして受け入れるのが怖いような、そんなとまどいが聞こえてくるような気がしてなりません。

ラフマニノフの性格については、伝記によって色々違った説がありますが、私が一番信頼しているパジャーノフ著の伝記によると、ラフマニノフは、あれだけピアニストとしても、作曲家としても、世界的に成功したにも関わらず、死ぬまでずっと、自分の才能(特に作曲家としての才能)に自信が持てず、また人見知りで、傷つくのが怖い、繊細な一人の人間だったといいます。

これは映画などにも取り上げられているエピソードなので、ご存知の方も多いかもしれませんが、ラフマニノフが全精魂かけて作曲した交響曲1番の初演は、指揮者の失敗の為に悲惨な結果に終わり、批評家などからズタボロに酷評され、その為にラフマニノフは一時期、精神治療にかかっていました。

その後、治療により回復し、コンチェルト二番などで成功したもの、どんな賞賛をもらっても、本当に信じきることができず、常に自分の才能への不安と戦っていたそうです。

ラフマニノフは、頑固で口数少なく怖い印象だったと言われがちですが、そんな彼の外面の印象は「人から拒絶されるのが怖い」「傷つくのが怖い」という裏返しだったのかもしれません。


そんなラフマニノフが、初めての愛娘の誕生という、幸せの奇跡を目の前にした時に溢れ出てきた音楽 ― 喜びだけではなく「この奇跡を、もし喜びを持って受け入れてしまったら、また傷ついてしまうのではないか」というとまどいや恐れが交錯する、繊細で美しすぎる音楽― は、本当にあまりに切なくて、たった2分半の曲の中に、「巨匠」「天才」と呼ばれた裏に隠れていた、彼の普通の一人の人間としての一面を感じて、胸が痛くなります。


このプレリュード23-6を始め、先日のブログでもご紹介した交響曲第2番3楽章のピアノソロバージョンなど、、合計10曲のラフマニノフ小品プログラムから成る「Preludes +」のリサイタル、いよいよ本番が1日後にに迫ってきました。

まだまだ未熟な、1ピアニストとして、ラフマニノフの音楽の持つ本当の魅力や限りなく深い優しさやエネルギーを、どれだけ作曲者とお客様を繋ぐ媒体となって伝えられるか分からないけど、

もしコンサートにいらして下さるお客様のたった一人でも、今まで知らなかったラフマニノフの曲やその魅力に出会うきっかけになってくれたら、これ程嬉しいことはないです。

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5月7日(水)のピカデリーサーカスでのコンサート
「松本さやかラフマニノフリサイタル"Preludes +"」は、
St.Jame's Church, Piccadilly Circusにて、1時10分からです。
(チケット事前予約不要。Free Admission)
詳細はこちらから。
ラフマニノフの音楽に出会いに、是非いらして頂けたら嬉しいです!
by sayaka-blmusic | 2008-05-06 07:41 | ラフマニノフについて

次回コンサートのお知らせ またまたラフマニノフづくしです!

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次回コンサートのお知らせです。
昨年のラフマニノフ「音の絵」Op.39 全曲プログラムに続いて、今回はラフマニノフのプレリュード集を中心としたプログラムです。

松本さやかラフマニノフリサイタル 第3弾
Preludes + (プレリューズ・プラス)


2008年5月7日(水)13時10分~14時
ST.JAMES CHURCH (PICCADILLY CIRCUS) 会場のウェブサイトはこちら
地図はこちら
入場料:無料 (事前予約不要) チャーチへの自由寄付あり

曲目
ラフマニノフ プレリュード集より
ラフマニノフ "FLOWER PIECES" Lilacs(リラの花) & Daisies(ひなぎく)
ラフマニノフ 交響曲第二番より第三楽章 
 ピアノソロ編曲バージョン(in Piano Transcription by Sayaka Matsumoto)



主催・ANGLO JAPANESE SOCIETY OF WESSEX, 日本航空(JAL)

場所はロンドン繁華街中心部のピカデリーサーカス駅から徒歩2分。
ジャパンセンターのすぐ隣辺りにある大きなチャーチです。
チャーチとしては珍しく、イタリアのピアノブランド「Fazioli」のフルコンサートグランドピアノがあり、コンサート会場としても頻繁に使われているチャーチです。

プログラムは最近すっかりどっぷりはまり中のプレリュード集から厳選した6曲と、
「花」をモチーフにした曲としてライラック、デイジーズ、
そして先日のブログでもご紹介した「交響曲第二番 ピアノソロ編曲版by松本さやか」を初公開!!

個人的には思い入れたっぷりのプログラムで、
大好きでしょうがない曲を集めてしまった感じです。

上の写真は、コンサートが行われるチャーチの内部です。この日はハープシコードのコンサートが行われていました(写真はコンサート後です)。 駅からも近く、とても広いステキなチャーチなので、もしこれをお読みのロンドン在住の方でご都合がつく方がいらっしゃいましたら、是非お友達をお誘い合わせの上いらして頂けたら嬉しいです。
by sayaka-blmusic | 2008-04-11 23:43 | ラフマニノフについて

ラフマニノフ交響曲ピアノソロバージョン編曲 やっと仮完成!

最近の練習は、5月7日(水)にロンドンで行うラフマニノフリサイタルに向けて、ラフマニノフのプレリュード集を中心に練習しているのですが、それと同時に最近力を入れているのが、ラフマニノフのオーケストラ曲の、ピアノソロバージョンへの編曲作業です。

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現在アレンジしている曲は、先日のブログ「号泣コンサート」にも書いた、ラフマニノフの交響曲第2番の第3楽章。

第2番というと、「あー、のだめカンタービレで千秋が弾いてのだめが影響受けて猛練習していたあの曲ねー」と思う方がいらっしゃるかもしれませんが、あれはピアノ協奏曲の第2番で、今回アレンジしているのは協奏曲ではなく、オーケストラのみで演奏される「交響曲」の方の第2番です。

この曲は、大好きで大好きで、聴く度に涙を流してしまう曲なのですが、
コンクールやコンサート等で頻繁に演奏されるピアノ協奏曲2番と比較すると、
ラフマニノフの交響曲の方は演奏されることが少ないので、よほどクラシックやラフマニノフが好きな人でない限り、あまり知られていない隠れた名曲です。
音大生でも「ラフマニノフの交響曲は聴いたことない」っていう人は意外に多いし。



うーーーん、こんなに名曲なのに、もったいない・・・・。



自分自身のコンサートでも演奏して、一人でも多くの人にこの曲のことを知ってもらいたい!と思い、ピアノソロバージョンの楽譜を探してみたところ、
何人かのアレンジャーによって編曲されている異なるバージョンが幾つか出版されているものの、どれも簡略化されすぎていて、大好きなフレーズも半分以上カットされてしまっている。

この曲の魅力を最大限に引き出せるピアノソロバージョン、
無いなら自分で納得のいくものを、自分自身で1から編曲してみよう、と思い、
ロイヤルアカデミーの図書館からオーケストラのスコアを手に入れて、1月末位からこの曲のピアノバージョンへのアレンジを始めました。

ラフマニノフのピアノ協奏曲の方については、これまでに幾つか自分自身でソロバージョンやトリオバージョンに編曲をしていて(ピアノ協奏曲第2番ピアノソロバージョン・トリオバージョン・フルート&ピアノバージョン・チェロ&ピアノバージョン、パガニーニの主題による変奏曲18変奏ピアノソロバージョン、 などなど)、 コンサートでも演奏しているのですが、フルオーケストラの為の曲である交響曲のピアノバージョンへの編曲は私にとって初挑戦。

オーケストラ曲をピアノ用にアレンジ、ということは、
100人近くで演奏し10以上のパートから成る曲を、
1台のピアノで、たった2本の手で演奏できるようにアレンジしなくてはいけません。

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冒頭のテーマ部分のスコアの一部。ラフマニノフの曲の中でもベスト3に入る珠玉の名メロディだと思います。このメロディを見て、「ああ、この曲のことね!聴いたことある!」と思う方もいらっしゃるかもしれません。


オーケストラのスコアのコピーを並べ、いくつかのオケによる演奏を聴き比べながら、
重要なパートに印をつける作業からスタート。ソロバージョンに含める候補のパートを全てピックアップした後、五線譜に書き写しながら、2本の手で演奏可能な範囲で音数を調整していきます。同時に極力和声的な禁止事項などに抵触しないよう各パートの動きや和音の転回を微調整。


うーー、ここはクラリネットのパートは入れたいのに
バイオリンパートと一緒に弾くと指が足りない・・・。
うーーーーでもフルートのパートも入れたい。
ああああファゴットパートも捨てがたい・・。

断腸の思いで、いくつかのパートを諦めながら、
可能な限り原曲に忠実にピアノで再現できるよう、音を並べていく。

ちなみにラフマニノフはこの素晴らしい第3楽章を、たった2日で作曲したそうです(参考:伝記「ラフマニノフ」音楽之友社))。それをピアノバージョンにするのに数週間もかかってしまった私・・・。うーーむ、天才のメッセージを凡人が理解するには時間がかかります・・・・。


それにしても、この曲にはやっぱり底知れない魅力があるなぁ・・・と、
今回編曲をしていて改めて思わされました。

ロンドン地下鉄の喧騒の中、自宅の狭いフラットの机の前、
繁華街Oxford Circus駅前のマクドナルドのテーブル、などなど
おおよそラフマニノフの雰囲気とはかけ離れた状況の中で編曲作業をしていても、
iPodでこの曲のオーケストラの演奏を聴きながら、スコアを眺めていると、頭の中に信じられないくらい広大な世界がぶわーーーーっと広がって、ついついまた涙が出そうになる。
マクドナルドのテーブルで、一人五線紙を前に鉛筆を握り締めて涙を流している姿はハタから見るとかなり怪しい人ではあるのだけど・・・。

ラフマニノフの音楽って、聴いていると
ある国の一定の景色が写実的なイメージとして思い浮かぶというよりも、自分の中での内的世界の景色が広がっていく感覚がします。
普段の生活の中ではなかなか足を踏み入れることのない、心の中に広がる「無意識」という名の無限の海に、一瞬のうちに連れて行ってくれる、そんな感覚です。


そんなこんなで、ここ1ヶ月ほど進めていた交響曲第2番第3楽章のピアノソロアレンジ、
やっと先日、仮完成しました!

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完成したのはいいのですが、
欲張って色々な楽器のパートを詰め込みすぎて、かなり技術的に演奏困難な曲になってしまい、現在、自分自身の書いた楽譜と格闘しながら練習中・・・。

完成バージョンは、2008年5月7日(水)にロンドン・ピカデリーサーカスのSt.Jame's Churchで行う松本さやかラフマニノフリサイタル第3弾 「Preludes + (プレリューズ・プラス)」(仮タイトル)にて、初公開予定です。


日本ではちょうど昨日、妹松本あすかの六本木STBでのライブが無事終わったとの報告をもらいました。お疲れ様あっちゃん!そしてこのブログをお読みの方で、会場まで足を運んで下さった皆様、本当にありがとうございました。




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■追記■

ラフマニノフ交響曲第2番第3楽章の動画、YouTubeで見つけました。

- YouTube動画 ラフマニノフ交響曲第2番第3楽章(アンドレプレヴィン指揮 N響)

- YouTube動画 ラフマニノフ交響曲第2番第3楽章後半より (プレトニョフ指揮 ロシア国立交響楽団)


この曲のCDも世界中のオーケストラから沢山出ています。
3楽章だけでなく他の楽章も超名曲なので、視聴だけでも是非聴いてみて下さい。
(記事トップのCDジャケットは、私のお気に入り版の一つ、ヤンソンス指揮サンクトペテルブルグオケの版のものです)

- amazon.co.jpでのこの曲のラインナップ

- amazon.co.ukでのこの曲のラインナップ

by sayaka-blmusic | 2008-03-15 10:46 | ラフマニノフについて