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夢に向かっていくということ

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「プロムスで演奏する仕事があってロンドンに行くんだけど、
本番前に少し時間があるから是非会えるかな?!」

と、同じ桐朋ソリストディプロマコースで出身で
当時一緒に室内楽などをさせてもらってたバイオリニストのMちゃんから、久しぶりにメールがあったのは2週間前のこと。
Mちゃんは現在ドイツのハンブルグ在住。

プロムス(イギリスの音楽祭)のコンサートで演奏?!
しかもNDR交響楽団(北ドイツ交響楽団)の一員として!
すごい!それは是非聴きに行くよー!

ということで、先週の土曜日、約4年ぶりにMちゃんと再会。

昼のリハーサル後、夜までの間、
オーケストラのメンバーは自由時間だそうだ。
テロ未遂事件の余波で楽器の搬送が大変だったとか、
プロムスの演奏者側からの裏話も色々聴けて面白かった。

ロイヤルアルバートホール近くのカフェでお茶したあと、
ハイドパークをぶらぶら歩きながら、
お互い、近況について色々話をする。

Mちゃんは、なんと小学校の頃から、
とにかく「将来は絶対ドイツのオーケストラに入りたい!」
と強く心に決めていたんだそうだ。
アメリカでもオーストリアでもなく、
「ドイツ」のオーケストラの響きが昔から大好きで、
どうしても入りたいと思っていたとのこと。

小さい頃からオーケストラで経験を積み重ね、
留学先もドイツに決め、
4年間ドイツの音楽院でバイオリンを学び、オーケストラの研修、入団試験などを経て、
そしてとうとう、ドイツの国営放送局NDRのオーケストラ(北ドイツ放送交響楽団。日本でいえばNHK交響楽団にあたる)の一員として正式に入れることが決まったのは、つい最近のことだそうだ。


本番の時刻が近づき、
楽屋口までMちゃんを送って、
私はいつも通り当日ギャラリー席の列へ並ぶ。

最上階回廊からでも、
オーケストラの中で、ドイツ人の中にポツンと混じる
黒髪のMちゃんの姿はよく見えた。

「ドイツのオーケストラに入りたい!」

強く強く夢を持ち続け、
そしてそれを本当にかなえてしまったMちゃん。

夢が現実になった瞬間に立ち会えた気がして、
すごく嬉しかった。


そして北ドイツ交響楽団による

ラヴェル:クープランの墓、
ストラヴィンスキー:バイオリン協奏曲(vn. Gil Shaham)
チャイコフスキー:交響曲第4番

最上階回廊にも届くクリアで繊細かつダイナミックな音で、
本当に素晴らしかったです。

ちなみに、Mちゃんが生まれて初めて手にしたクラシックのCDが、
なんと偶然にも、将来Mちゃん自身が入ることになるこのオーケストラのものだったらしいです。

運命だなぁ・・・・・・・。



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そして、Mちゃんとの再会の余韻に浸っていた矢先の8月30日、

ロンドンでアーティストコーチをしていらっしゃる青木理恵先生
の「アーティストのためのコーチングサロン第一回」に参加させて頂きました。

「ヴィジョンを明確に描くことの大切さ」が今回のテーマ。


イチローが小学校の時の文集に書いた作文のコピーが配布され、読ませて頂いたのだけど、
そのあまりのヴィジョンのクリアさに驚愕してしまった。

そこには当時小学生のイチローの文章で、
将来自分が何になりたいかはもちろん、
どんな野球選手になりたいか、
どんな風に活躍しているか、
その為に今何をしているか、などが
一寸の迷いも、余計な謙遜もなく
恐ろしい程詳しく、明確に書かれていた。


きっとドイツのオーケストラに入ったMちゃんも、
小さい頃から、将来の自分に対して、
本当に明確な像を描いていたのだと思う。



夢を現実にすること。

半分は努力で
半分は運命や運かもしれない。

もちろん着実になんて簡単には行かず、
行き当たりばったりになってしまうことだってある。
人生予定外のハプニングはつきものだし、
途中で夢の内容が変わっていくことだってたくさんあり得る。


でも、
「いつか叶えよう」と漠然と思っている人と
「いつまでにこんな風に叶えよう」と明確な目標を持って強く強くそれを願った人とでは
明らかにその結果は変わってくるのだと思う。


私の場合長い間ずっと、明らかに前者だった気がする。

小さい頃、友達から
「さやかは将来の夢が決まってていいねー」と言われることが良くあったけど、
本当は実際全然決まってなんていなかった。
漠然と「ピアノを弾いている将来像」というものを描いていただけで、
明確な夢はなかったばかりか、
ピアノから全く離れた経験や夢を追い求めて、
一時期は「ピアノ」自体を自分の夢から全く外していた時もあった。

予定外の大ハプニングもいくつかあったし、
実際はかなりの大回り道。
それに、当然のことだけど、
「生きていくための仕事」も当然平行して続けていかなくてはいけないわけで、
日々の仕事や雑用に追われて、
自分で将来何がやりたいのだか見えなくなっていった時期も何度もあった。
桐朋ソリストディプロマ時代にさえ、
秘書の仕事やったり簿記勉強したりと、
全然ピアノとは関係ないこともやったりしていたし。
(それはそれで楽しかったし素晴らしい経験だったから良かったのだけど)


やっと心の底からピアノが好きになって
更に「10年後はこういう風になっていたい」という夢がぼんやりと見えてきたのは、
本当につい最近のことだ。

でも今回このコーチングサロンに参加してみて、
10年後に叶えようと思っていた自分の夢のための、
それに向けた小さな第一歩は、
今すぐにでも着実に始められることだということに気付いた。
しかもその夢の実現のためには、恐らく10年なんてかからなくて
本気でやれば3~5年もあれば十分だということも。

そういえば、高木雅邦さんという方の本で、
「目標」ではなく「標的(ターゲット)」を決めろ、
というインド人の教えが書かれていたけど、
確かに、イチローもMちゃんも、
明確な「ターゲット」を自分の中に描いていていたからこそ
そこに向かって真っ直ぐに突き進んでいき、
夢を実現できたのではないかなと思う。


「夢」を「目標」と言い換えて、
更に、絶対に何としてでも打ち落としたい「標的(ターゲット)」と言い換えた時に、
その時点で、その夢は既に現実に一歩近づいているのかもしれない。


一歩一歩、少しずつだけど、
私なりに、夢、目標、いやターゲットに向かって、
頑張ってみようと思う。


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アーティストコーチの青木理恵先生による
「アーティストのためのコーチングサロン」、
次回は2006年9月27日開催とのことです。
アーティストを目指していてコーチングに興味のある方であれば、どなたでも大歓迎とのことです。
ロンドン内Gloucester Road徒歩5分の青木先生宅で行われます。参加料金5ポンド。
色々なジャンルのアーティストの視点からのお話も聞けて、本当に良い体験になります。
次回についての詳細は、青木先生のサイト
http://coachinglesson.blogdehp.ne.jp/
からE-mailにて問い合わせできます。

◇トップの写真はMちゃんと会った日のロイヤルアルバートホール。
イギリスの音楽祭プロムスについては、前々回の日記で詳しく書いています。
by sayaka-blmusic | 2006-09-03 21:52 | ひとりごと
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