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ラフマニノフ「音の絵」

ロイヤルアカデミーの修了リサイタル試験が、いよいよあと1週間にせまってきました。

曲目は以下の予定。合計約70分間のリサイタルプログラム。

ドビュッシー:プレリュードより「妖精パックの踊り」
         「喜びの島」

モーツァルト:ピアノソナタK.533/494(ヘ長調)全楽章

ラフマニノフ:「音の絵」Op.39 No.1~9 全曲


もちろん、どの曲も大好きな曲なんだけど、
この中で一番思い入れがあるのは、なんといってもラフマニノフの音の絵Op.39全曲。
そもそもこの「音の絵」を弾きたくてしょうがなくて、
それから他の曲を決めた感じです。

でも実はこの音の絵、実際に私が今までに弾いたことがあるのって、9曲中4曲のみで、
残りの5曲は、コンチェルト試験が終わった3月末以降の2ヶ月で
一気に(死にそうになりながら)譜読み&暗譜した感じなので、
弾きこんでない状態で9曲通すのって、本当にきつい。。。
しかも、ラフマニノフ弾く時って、
何故か他の作曲家の曲より10倍くらいエネルギーを使うんです。。
他の作曲家の曲を10分くらい弾いてる時のエネルギーを
1分で使い果たしちゃう感じ。

この間のレッスンで、初めて9曲全部暗譜で通して弾いたところ、
8曲目まではなんとか神経を持ちこたえていたのですが、
最後の最後の9曲目で大崩壊し、修復不可能になり、
エルトン先生に

「Your brain stopped.....?? (脳みそ停止したね・・・・??)」

と言われました。。。。;;



果たして、試験で崩壊せずに9曲弾き通せるか。。。。うううう。。。。


それでもどうしても弾きたいラフマニノフ。
大好きで大好きでしょうがないラフマニノフ。
ラフマニノフ中毒なんでしょうがないです。

映画のシャインで
主人公がラフマニノフを弾きながら失神しちゃうシーンがあるけれど、
その気持ち、分かる気がする。
ラフマニノフを弾いてる時とか聞いてる時って、
脳内に変な物質が分泌されてる(?)気がする。
意識と無意識ぎりぎりのところで弾いてる感じ。


ただラフマニノフの曲って、あまりに技術的に複雑な部分が多く、
そこに気を取られると、音の多さとやかましさばかり目立ってしまう危険性があるのだけど、
そこを一歩乗り越えた時には、
壮大なファンタジーの世界が、そこにある。

今回の「音の絵」も、ただの練習曲としてでなく、
まるで本当に「音の絵」を1ページずつめくるように、
イマジネーションとファンタジーに溢れた演奏ができたらな、と思っています。


9曲それぞれの今の時点での印象を
私自身のためのメモ代わりにも書き残しておこうと思います。
もしまだ聞いたことない方がいらっしゃったら、是非CDなどで聴いてみて下さい。
ホロヴィッツ、キーシン他色々ピアニストが録音を残しています。
本当に珠玉の名曲揃いです。

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さやか曲目解説(?)というかメモ
ラフマニノフ 練習曲 「音の絵」Op.39 No.1~9
(いくつかの作品には副題がついています)

第1曲: 

なんともいえない轟きで、この壮大な曲集が幕開けされます。
ピアノでない「何か」、が迫ってきて、また遠ざかったかと思うと、
すごい勢いで目の前に現れ爆発する。
小さい頃、風邪をひいたりして熱を出す前に、何故か必ず、
何か得体の知れない巨大なものが迫ってきたり遠ざかったりする夢を見てたんだけど、
あの感覚に近い。

このオープニングで「ピアノ」の楽器の音が聞こえてきちゃったら、
この曲集は「音の絵」ではなく「練習曲」になってしまうんだろうな。。。
まだ模索中です。


第2曲:「海とかもめ」
まさに「海とかもめ」!どこまでも無限に続く海と、「くうううう」と鳴きながら飛んでいるかもめの、ノスタルジックで寂しくてどこか恐ろしい風景。
ラフマニノフのこういうどこまでも淡々とした曲もホント好きだなぁ。。。
独特の緊張感が張り詰める中、
ハーモニーの色だけが少しずつ微妙に色を変えていく。
ベースの音で、ぽたーんと新たな色が水中に落とされ、
そこからハーモニーが、まるで色が水中でにじんでいくように広がっていく感じ。


第3曲:
弾き方によって、印象が180度がらりと変わってしまう不思議な曲です。
ガンガン弾いたら、それこそただの「練習曲」風になってしまうし。
ころころ変わるハーモニー、広がっていくアルペジョ。
曲全体がものすごい「マジック」に満ち溢れている気がする。


第4曲:
バロック風と、ゲーム音楽(電子音楽)風が混ざったような不思議なテイストの曲です。
ラフマニノフって何故かゲーム音楽風のパッセージが突然出てくることが多い気がする・・・。
ラフマニノフのコンチェルト「パガニーニの主題による狂詩曲」の21個目のヴァリエーションとかも、「ラスボス戦?!!」みたいな感じだし(笑)

それにしても色々な意味で重過ぎる曲が集まっているこの曲集の中で、
かなり異彩を放っている曲。


第5曲:
この5曲目だけで、一つの映画になっちゃうんじゃないかっていうくらい、ドラマが詰まった曲。
私は何故だかこの第5曲目は、ピアノコンチェルトを弾いてる錯角になるんです。
ピアノだけでなく、オーケストラと指揮者が見える気がする。
3ページ目の右手の単音テーマはいかにも「ピアノソロ」が始まる感じだし。
そして、ラスト前の低音部のテーマ部分は、
ラフマニノフのピアノコンチェルト第2番の3楽章のラストのテーマにかぶってしまう。
(ソードーーーーシ(フラット)ーーソーーファーーソーーって部分)
ピアノが高音部の和音で伴奏、そして弦(特にチェロ)を中心としたオケ全体が
メロディを担当して引っ張っていく感じ。



第6曲:「赤ずきんちゃんと狼」
冒頭の迫る低音が狼のしのびよる音、つづいて聞こえてくる高音部の速いパッセージが、
赤ずきんちゃんが逃げているところ、らしいです。
いや、でも赤ずきんちゃんのお話、こんな恐ろしかったら子供みんな泣いちゃうと思うんだけど・・(笑)
それっくらいコワイ曲です。
特に、中間部の連続和音のあたりからは、
弾き手も聴き手も全員、ラフマニノフによってわしずかみにされ、散々振り回された挙句、
突然ぽいっと捨てられ、また赤ずきんちゃんの逃走が始まります。おそろしー。

第7曲:「葬送行進曲」
この曲がラフマニノフのピアノ曲で一番の傑作だと明言する人も多い位、
物凄い深い恐ろしいエネルギーを秘めた曲です。
エルトン先生いわく「inexorable death march(誰にも止められない死のマーチ)」
ラスト近くで、突然Major(長調)になって
まぶしいくらいの光に全身を打たれるような瞬間が出てくるのですが、
ここの部分は、最初聴いた時、全身鳥肌がたった。
そして360度鳴り響く鐘の音に包まれるんです。
何度聴いても、何度弾いても、この瞬間は、頭の中が光と鐘でいっぱいになって、
めまいでクラクラしそうになる。
iPodとかで外で聴くのは危険です。要注意。

最後はもう一度死のマーチに戻った後、突然全てが途切れる。


第8曲:
この曲、あまり有名じゃないけど、私的に一番好きな曲です。
美しすぎる・・・・・。
ラフマニノフの映画音楽風モード(?)の本領発揮曲。
特にラスト前のフォルテの盛り上がりから、
ふーーーっと力が抜けて、
E-flat majorの和音に変わるところ、
ああああもうこれだから私はラフマニノフ中毒になっちゃうのよーー(T T)
と泣きたくなるくらい切なすぎる。

第9曲:「東洋風行進曲」
いわずと知れた一番の有名曲。無茶苦茶かっこいい曲で、
ついイケイケガンガンで弾きたくなってしまうけど、
むしろ進みたいのに進めない「重さ」みたいなものをしょって弾いた時に、
迫力がかえって倍増するから不思議。
東洋風、とあるけれど、ラフマニノフさん、これはどう考えてもあなたの国の曲です。100%ロシア風。
ラストは色んな意味で失神寸前です。
by sayaka-blmusic | 2006-05-26 20:17 | ラフマニノフについて
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